コラム - 労働安全衛生(HSE)と既存建物の遵法性調査

 今回のコラムでは、労働安全衛生(HSE)と既存建物の遵法性調査について説明します。

■建物利用者の安全を確保する責任

 建物には、そこで働く人、そこを利用する人、そこに住む人など、様々な利用者がいます。建物を計画・建築・取引・運用する者は、建物利用者の安全を確保する責任があります。建物において災害が発生した場合、社会からの信頼を失うリスクのみならず、災害のもたらす多大なコストが企業の基盤を揺るがすリスクに晒されます。

・建物利用者が、火災をはじめとする災害に遭わないようする
・完成した建物および建築中の建物において、建物利用者の安全・衛生を確保する

これらを実現するために、以下の各法律を遵守することが義務となっています。

■建物利用者の安全確保のための法律

 建物利用者の安全を守る主な法律として、「労働安全衛生法」「建築基準法」「消防法」があります。目的はそれぞれ異なりますが、これらの法律が複合的に機能していなければ、利用者を守ることはできません。

法律目的
労働安全衛生法 職場における労働者の安全と健康を確保
建築基準法 建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最低の基準
消防法 火災を予防・警戒・鎮圧し、国民の生命・身体、財産を火災から保護

 安全確保の責任を果たしていない状態は、企業にとって大きなリスクです。労働安全衛生法、建築基準法、消防法の目的をよく理解してから、建物自体の安全と、そこで働く人たちの安全・健康を確保しなければなりません。問題が顕在化する前に、すべてを遵法な状態にしておく必要があるのです。

■違法状態の放置が災害につながった事例

 違法状態を見過していたことが、大きな災害に繋がった事例を、3つ挙げます。

(1)雑居ビル火災(2001年、日本)

・法律違反事項
建築基準法:2以上の直通階段が設置されていない/無窓居室等の排煙設備に不備がある/防火戸連動煙感知器の設置位置が不良/非常用進入口が閉鎖されている、等
消防法:避難器具が設置されていない/避難誘導訓練が実施されていない、等

・発生状況
雑居ビル3階のエレベーターホール付近から出火。階段やエレベーターホールに置いていた大量の物品に燃え広がり、3階および4階の店舗に延焼、客および従業員が各店舗内で焼死ないしは一酸化炭素中毒死した(死者44名)

(2)社会福祉施設火災(2009年、日本)

・法律違反事項
建築基準法:主要な間仕切り壁が準耐火構造でない/調理室の内装が準不燃材料等で仕上げられていない、等
消防法:火災報知設備が設置されていない/避難訓練が実施されていない、等

・発生状況
入居者の1室から出火、周囲の居室に延焼した。徘徊防止のため施設内の避難扉は施錠されており、避難誘導もなく、入居者の多くが一酸化炭素中毒等により死亡(死者9名)

(3)縫製工場ビル倒壊(2013年、バングラデシュ)

・発生状況
縫製工場、銀行、商店などが入居していた建物は、正規の許可手続きなしに建築されたもので、5階以上の3階が違法に増築されていた。崩壊の主な原因は、縫製工場の自家発電機や機械の重量過多。建物利用者が多数死傷した(死者1,100名以上)

■各法規は何をチェックするか?

 「労働安全衛生法」「建築基準法」「消防法」に定められた、安全の確保に関する主なチェック事項について、説明します。

(1)労働安全衛生法
労働安全衛生法の目的は、労働災害防止の基準の確立や、責任体制の明確化、自主的活動の促進など、労働災害防止対策を推進することで、労働者の安全・健康を確保するとともに、快適な職場環境を形成することです。

●事務所のチェック事項例

・災害時に建物利用者は安全に避難できるか
・消防設備は適切に機能することが確認されているか

●工事現場のチェック事項例

・工事現場で施工管理体制が適切に整備されているか
・資格管理は実施されているか
・安全通路など、必要な掲示がされているか
・作業員は労働安全衛生法に準拠した作業を行っているか

(2)建築基準法

建築基準法には、建物利用者の安全確保に関する項目として、建物の耐火性能、採光および換気、階段の構造、排煙規定、防火・避難規定などが定められています。

●チェック事項例

・避難経路上に障害物はないか
・排煙設備は作動上問題ないか
・防火区画は成立しているか
・非常用照明は適切に設置されているか
・避難距離は確保されているか

(3)消防法

消防法には、建物利用者の安全確保に関する項目として、火災予防のため組織体制、危険物の取り扱い、消防設備の設置・点検、消火体制、火災の調査などが定められています。

●チェック事項例

・定期点検記録はあるか
・防火管理者は任命されておるか
・避難訓練を実施しているか
・感知器が設置されているか
・避難経路が掲示されているか

■ビューローベリタスが提供するサービス

 ビューローベリタスでは、HSE(環境・労働安全衛生)領域の適合性を確認する監査・検査・認証サービスを提供しています。

 労働安全衛生においては、事業所・工事現場における労働安全の観点から、お客様の要求する労働作業環境が確保されていることを確認するサービスを提供します。お客様との打ち合わせをもとに、各チェック基準を作成し、調査を実施します。

 また、建物の遵法性についても、遵法性、安全性、施工運用計画などの観点から、お客様のニーズに最適な形で監査サービスを提供しています。

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