自治体版CASBEEの推移と、主なインセンティブ制度

前回は、CASBEEファミリーの概要と2016年版改訂について説明しましたが、今回は自治体版CASBEEの推移と、主なインセンティブ制度について説明します。

自治体版CASBEE届出数の推移

2004年の名古屋市を皮切りに、政令指定都市を中心に導入が進んでおり、2017年3月末までの届出件数の累計は21,000件を超えています(表1)。現在24の自治体が条例に基づき一定規模以上の建築物の新築等に対してCASBEE届出を義務付ける制度を導入しています(表2)。

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表1.CASBEE自治体版の累計届出件数と自治体数の推移(出所:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構より、弊社作成)

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表2.地方公共団体の自治体版CASBEEの届出数の推移(2017年3月末現在、出所:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構

  • (注1)同じ府県下に制度を実施している市がある場合には、市の人口を除いた数を記載。(*印の数値)
  • (注2)数値の後に「超」と記載されている場合は、その床面積を超える建築物が対象になることを意味する。
    「以上」と記載されている場合は、その床面積を含んでそれよりも大きい建築物が対象になることを意味する。
  • (注3)大阪市はH24年4月より5,000㎡超から2,000㎡以上に変更
  • (注4)横浜市はH21年度まで5,000㎡超、H22年度から2,000㎡以上に変更
  • (注5)大阪府と堺市はH24年7月より5,000㎡超から2,000㎡以上に変更
  • (注6)千葉市はH23年度まで5,000㎡以上、H24年度から2,000㎡以上に変更
  • (注7)川崎市はH24年度9月末まで5,000㎡超、H24年度10月から2,000㎡以上に変更
  • (注8)神奈川県はH24年10月より5,000㎡超から2,000㎡以上に変更
  • (注9)神奈川県のH22年度、H24年度、H25年度、H26年度の届出数については、それぞれ1件中止(計4件)を含む

また、これらの自治体で利用されているCASBEEの一部は、各自治体の地域性や政策等が重点項目として考慮され、より地域の実態を反映したものとなっています(表3)。

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表3.各地方自治体の自治体版CASBEEにおける重点項目一覧
(出所:中田雅陽(2015)「地方自治体における建築物環境計画書制度とCASBEEの動向」)

自治体による主なインセンティブ制度

自治体が実施する助成制度の判断基準や総合設計制度における容積率緩和の要件としての利用、顕彰制度や自治体独自の認証制度としての活用など、CASBEEを用いたインセンティブ制度は自治体によってさまざまです(表4)。

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表4.自治体によるおもなインセンティブ例(出所:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構
  • 建築物環境性能表示制度
    CASBEEの評価結果を広告物等に表示することを義務付ける制度で、大阪市、横浜市などで実施されています。表示制度は、住民にCASBEEの認知を広めることや、自主的な環境性能の向上を誘導することを目的としています。
  • CASBEE連動した住宅ローンの金利優遇等
    一部の自治体では、金融機関と連携して、CASBEEによる評価結果が高い住宅について、住宅ローンの金利優遇を行う制度を実施しています。

その他、CASBEEを利用した助成制度等の広がり

国、自治体、民間企業などで活用されているCASBEEですが、国においては、2012年にスタートした低炭素建築物認定制度で、認定基準における選択的項目の一つにCASBEEが採用されています。また、国の助成制度、サステナブル建築物等先導事業では、事業者の選定にCASBEEの評価結果が活用されています。公的機関においても、CASBEEを利用した助成制度や低利融資制度など、CASBEEによるインセンティブ制度の採用が増えています(表5)。

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表5.CASBEEを利用したおもな助成制度(出所:一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

→ CASBEE評価認証→ CASBEE適合性検証

※ビューローベリタスが適合性検証業務を行った建築物に対して、ビューローベリタスが認証業務を行うことはできません

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