コラム - 環境認証の必要性と今後の動向(2)

伊藤雅人氏(三井住友信託銀行 不動産コンサルティング部)へインタビュー

[全2回]
(1)環境認証の必要性
(2)今後の動向

(2)今後の動向

■ グリーンボンド普及により環境認証取得が拡がる

 インタビュアー 
この間たまたまニュースでグリーンボンドというお話があって、その中で債権を発行するにあたり環境認証を盛り込んで広げていくというようなことが言われていたのですが。

 伊藤雅人氏(以下「伊藤」) 
そうですね。グリーンボンドの基準設定の中で環境性能認証は非常に分かりやすいので、そこの活用はこれから有り得ると思います。
グリーンボンド、グリーンファンド。グリーンファンドはどちらかというと認証を通じてGRESBの評価を高めて、グローバルファンディングをよりやりやすくしていくというような狙いにはつながっていくのでしょうが、グリーンボンドの場合にはまず、グリーンボンドであることを認められるために環境性能認証を取得するというのは有り得ますね。

 インタビュアー 
今は限られた業種からボンドやファンドということになっていますが、一般的な企業にも環境認証が拡がっていくのかなと思っています。透明性という観点が非常に求められてくるという意味では、CASBEE不動産というのはすごくフィットしたシステムだと思っているので、大変注目しています。環境認証がスタートしてからだいぶ広まり、業界としては大きくなってきていますが、今後どのような動きになっていくと思われますか。

 伊藤 
GRESBや環境の取り組みの開示のなかでも、認証を一度取得すればよいということではなくきちんと更新していくことが求められるでしょう。潜在的なニーズはもっとたくさんあると思いますので、CASBEE不動産にはまだまだ拡大の余地があるのだろうと思います。

 インタビュアー 
今、LEEDがある意味、デファクトスタンダード的な形になっていますが、コストが課題だと思っています。もともとLEEDもEBOMという既存のシステム以外は現状期限がありません。取得した後にもARCというシステムを使ってまた再度認証する仕組みが作られています。例えば3年前ぐらいにシルバーを取ったけれども設備改修して、そのARCを通じてゴールドやプラチナにするというような仕組みがあるので、今後増えていく既存建物に対するCASBEEや環境認証に着目して企業のお手伝いをできればと思っております。

 伊藤 
CASBEE不動産はもともと開発のコンセプトとして、特にREIT(リート)やファンド、他にも不動産鑑定書や評価書やエンジニアリングレポートなどいろいろ発注しているなかで、やはりそれらと同じコストや時間の感覚でいかないと普及しないだろうということでそこを合致させることは重視していました。
もちろんこれから先、省エネルギーに対する要請なども世間的に高まり基準は厳しくなる方向でしょうが、より厳格に見るべき点は見ていきながら、この制度自体を持続させていくということが重要ではないかと思っています。

■ CASBEE不動産 今後の動き―住宅版、WELL

 インタビュアー 
CASBEE不動産の建物用途はオフィス・店舗・物流施設の3つですね。今後どのように広がるのでしょうか。

 伊藤 
今、喫緊の課題は住宅ですね。REITやファンドでもレジデンスが非常に多いので、すごくニーズが高いです。あとはちょっと話が飛びますけれども健康快適性。健康快適性に配慮したオフィスというのは、国交省の委員会のほうでも中項目レベルでは取りまとめ内容が発表されています。それを受けて今度はCASBEE-ウェルネスオフィスとして評価内容と認証制度を詰めていくというのが2018年度の動きとしてあります。
世界的な動きとしては、LEEDの総合認証に加えて健康化=WELLがあり、CASBEEのクオリティーの部分を敷衍(ふえん)させたような概念ではあるのですが、そこをやはりもう少しきっちり見ていきたいと。場合によってはCASBEE不動産との併用ということもあるかとは思います。CASBEE不動産を使われやすいシステムにして、各当事者の選択肢に加えていただくような方向に持って行こうとしているところなので、この辺は2019年度以降、新しい動きとして出てくるでしょう。

 インタビュアー 
健康という観点でウェルネスオフィスが注目されると、従業員の方たちの健康を見ているということを企業がアピールするツールになってくるということですよね。

 伊藤 
いろいろ見解は分かれるのですが、ESGでいうとまさにSの部分ですよね。これは検討委員会の中で今、賃料との相関も見ていますが、一方で実際に従業員の健康状態との相関というのも見ていますので、これはまさに企業のプロフィットロスに係る項目にもなってきます。

 インタビュアー 
一方でアメリカのWELLの認証の動きを見ていますと、もちろん発祥であるアメリカは多いとして、その後に中国が続いている。大体オーダーが数百件という状況になっている一方で、まだまだ日本で認証は1件、申請を含めてもまだ8件。オーダーが2桁ぐらい違う状況で、企業がどう目を向けていくかが今後の課題になると思うのですが、法制度に絡めた動きはどうなのでしょうか。

 伊藤 
法制度というのはないのですけれども、ただ1つ言えるのは、例えばGRESBの投資家の立場でも環境性能評価システムはLEEDでなければいけないという観念は成り立たなくなっている。それぞれの国の実情に応じたシステムを受け入れるというのは、それは大いにありでしょう。CASBEEでもWELLでも、その国に合うものを作っていく、つまり日本での認証制度というのもありだと思っています。今のところ法制度に絡めてというのは、特に動きは無いと思います。

 インタビュアー 
CASBEE自治体は2万件ぐらい実施されていて、CASBEEの認知度はかなりあると思います。お客さまにとっての選択肢、自分たちにどれが合うのか、いかに自分たちの会社がそれによってベネフィットを受けられるかというところで、1つのツールとして選んで発展していくというのがすごく大事なことですよね。それをふまえて、お客さまから要望のようなお話はありますか。

 伊藤 
企業にとってのステークホルダーなどについてもそうなのですが、どれだけ環境性能認証に対する要請が高いかということを、もう少し示してあげてもいいかなと思っています。経済産業省の古いレポートの中で、海外投資家にとって日本の会社のグリーンビル認証の会社のレベルが低いと言われているなど部分的にはいろいろと出ていますのでそういった情報を示してあげればと思います。

 インタビュアー 
投資家の要望の取りまとめというのは、実際動きとしてはあるのですか。

 伊藤 
これからあるとすれば、SDGsについていろいろな業界が検討しているガイドラインのようなところに入れてもらうのもいいかなと思います。

 インタビュアー 
SDGsを絡めることで広がっていくかもしれませんね。

 伊藤 
いろいろとCASBEEの経済効果調査など、外部委員会の力も借りて一生懸命アピールしているのですが、何か分析結果のようなものを提示すると必ず否定的な意見が...。調査・分析をきっかけにもっとマーケットが盛り上がればいいと思います。LEEDなどは実際にそうやってマーケットが盛り上がったところがあります。

 インタビュアー 
CASBEE不動産のバージョンが今後また何かに応じて変わっていくようなことがあるかと思いますが、出てくるとすれば例えば省エネの法制度の改正などがきっかけになるのでしょうか。

 伊藤 
そうですね。一応、CASBEEのマニュアルも何年かに1回は改訂しなければいけないことにはなっているので、当然エネルギー統計も毎年変わっていくでしょうし、そこの中で大なり小なりこれからも改訂はしていくことでしょう。認証機関は改訂情報のアップデートについて敏感に対応をしていただければと思います。

三井住友信託銀行 不動産コンサルティング部 伊藤雅人氏

伊藤雅人氏 プロフィール

■経歴
1983年 早稲田大学法学部卒業、住友信託銀行入社
2005年東京都不動産鑑定士協会十周年記念論文『不動産に関する「環境付加価値」の検討』 にて、最優秀賞を受賞
現在、三井住友信託銀行 不動産コンサルティング部環境不動産担当部長

■委員会等
国土交通省サステナブル建築物等先導事業評価委員
国土交通省環境不動産普及促進検討委員会委員
CASBEE不動産評価検討小委員会幹事
CASBEE不動産評価員養成委員会委員
国連環境計画金融イニシアティブ不動産ワーキンググループ(UNEPFI PWG)メンバー
スマートウェルネスオフィス研究委員会 経済価値調査WG主査 ほか

■著書
共著/グリーンビルディング事例集 2008年秋(ビーエムジェー)
共著・総合編集/環境を考えた不動産は価値が上がる(住宅新報社)
共著・総合編集/マルチステークホルダーの動きから読む サステナブル不動産 (ぎょうせい)
共著/進化する金融機関の環境リスク戦略(金融財政事情研究会)
その他、新聞、専門雑誌への投稿等多数

■資格
不動産鑑定士、再開発プランナー、不動産証券化協会認定マスター ほか