COP26が2021年11月に終了し、産業革命前からの気温上昇幅を1.5℃に抑えるという目標が公式文書(グラスゴー気候合意)へ明記されることになりました。
しかし、既に気温は1.1℃以上上昇しており、2030年までに世界の二酸化炭素排出量を2010年比で約45%削減し、2050年までに実質ゼロにすることが必要といわれています。
そのような社会背景で、アメリカの建築物環境認証LEEDは、これまでも地球温暖化への解決策に対する取り組みを提示してきましたが、LEED v4.1では一層その傾向を強めました。それらの取り組みは主にエネルギー消費削減を狙ったものが多くを占めていますが、10月25日に発表されたPilot Creditでは、「Assess and Increase Onsite Carbon Sequestration Through Plantings(植栽による敷地の炭素隔離の評価と増加)」のような炭素隔離に関する取り組みも評価されることになりました。
現在、アメリカ国内のみを対象としていますが、今後世界的に波及してくると予想されるため、先取りしてご紹介します。
炭素隔離とは
炭素隔離とは、二酸化炭素の大気中への排出を抑制する手段を指し、生物学的なものと地質学的なものがあります。生物学的隔離は、植物が光合成により二酸化炭素を吸収し、セルロースやリグニンの形で炭素を貯めることで、植林活動など、より多くの木を植える取り組みです。LEEDv4.1では敷地内の植栽の炭素隔離能力が評価の対象となっています。
一方、地質学的隔離は、工場や発電所などから化石燃料の燃焼により排出された二酸化炭素を回収し、地中や海底に貯蓄することで、一般的にCCS(炭素回収貯留技術)プロジェクトを指します。
「ASSESS AND INCREASE ONSITE CARBON SEQUESTRATION THROUGH PLANTINGS(植栽による敷地の炭素隔離の評価と増加)」の取り組み内容
目的:
敷地内の樹木や低木の炭素隔離能力を評価および向上させることにより、プロジェクト敷地内の炭素の影響について認識と理解を高めること。
必須要件:敷地の隔離された炭素を評価する
最新バージョンのi-TreePlanting Calculatorからアクセスできる無料のツールを使用して、隔離されたCO2の量を評価する。すべての樹木と低木について、計画地とベースライン(関係者で定義した基準)を比較し、ベースラインは開発以前の状態や既存の状態とすることができる。また計画と基準は、同等の規模・方角・気候帯でなければならない。
選択要件①:オンサイト炭素隔離を増やす(1ポイント)
必須要件を完了してから、計画地の隔離された炭素の分析を実行する。全ての樹木と低木によって隔離された炭素が、単位面積あたり(重量比)が最低10%の増加を達成する必要がある。
または
選択要件②:代替戦略(1ポイント)
選択要件①で説明した方法に代わる手段での評価も可能とする。
例としてClimate Positive DesignのPathfinderツールなどの代替ツールも使用できる。
温暖化対策 目標達成に向けて
温暖化対策として、これまで太陽光発電・風力洋上発電が代表的に取り上げられることがほとんどでしたが、2030年・2050年の目標達成のためには、エネルギー削減はもちろん、炭素隔離も同様に具体な取り組みが求められると推測します。