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環境認証

建築環境認証のデファクトスタンダードLEEDの 普及の背景とLEED v4が目指すもの

国連によるSDGs推進を受け、企業におけるCSR(企業)・HSE(利用者)の取り組みも進化を求められています。
また、投資家によるESG投資は、グローバルな潮流として急速な広がりを見せています。日本でも、世界最大の運用資産額を誇る年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のPRI署名を契機にESG投資が脚光を浴びています。
これまで環境性能の向上に取り組み、低炭素・省エネを実現してきた建築業界においても、建築物の性能面だけでなく、持続可能な利用や運用といった側面を配慮することが重要になっていきます。
そのような世界情勢の中で全世界的に広がりを見せているLEEDの現状と、現在運用されているLEED v4について紹介致します。

世界で急増するLEED

米国のLEED(Leadership in Energy & Environmental Design)は建築物における、建物運用、敷地利用、省エネ効果などに対する取り組みを評価する世界共通の第三者認証制度です。グローバルな不動産会社・ファンドのESG指標であるGRESBの評価項目にも採用されており、このLEEDを取得した物件は環境性能において国際的な評価が得られます。
2008年より、LEEDの取得件数が世界規模で急増しています(図1)。2017年現在、165の国や地域で、9万800件以上のLEEDプロジェクトが存在するなど、LEEDは世界でもっともよく知られたグリーンビルディング認証システムとなっています。
LEED認証件数1位の米国では、REITが投資物件での認証取得を進めたことなどが普及の要因と言われています(出典:“Portfolio Greenness and the Financial Performance of REITs”, 2011)。一方、アジアでは中国とインドの認証件数が増えています。

図1 主要国のLEED認証件数推移(出所:USGBCウェブサイトより、弊社作成)
主要国のLEED認証件数推移(出所:USGBCウェブサイトより、弊社作成)

LEED取得の内訳を建物タイプ別に見ると、各国ともオフィスが最も多くなっており、特に中国とインドのオフィス比率が高くなっています(図2)。
日本ではオフィスに次いで小売店舗での認証取得が多く、米国・カナダと同様の傾向になっています。具体事例としては、日本生命 丸の内ガーデンタワーやイオンモール幕張新都心での取得などが挙げられます。

図2 主要国のLEED認証取得建物の内訳(出所:USGBCウェブサイトより、弊社作成)

主要国のLEED認証取得建物の内訳(出所:USGBCウェブサイトより、弊社作成)
主要国のLEED認証取得建物の内訳(出所:USGBCウェブサイトより、弊社作成)

LEED取得のメリット

USGBCは、LEED取得のメリットについて、「テナント誘致の競争力」「エネルギーと資源の節約、運用費の低下」「テナント賃料の上昇」「働く人や建物の利用者をより幸せにする」「社会への優れたPR効果」などを挙げています。さらに、差別的優位性としてグローバルな認証であることも挙げています。
近年のグローバル投資市場においては、企業経営を環境(E)・社会(S)・企業統治(G)の観点から評価する「ESG投資」が注目されています。投資家が企業の環境への取り組みを判断する指標として、建物や不動産においてはLEEDやGRESBが有効なツールとなっています。グローバル企業は、ESGの観点で投資家から選ばれるためにLEED取得を推進しています。

認証基準が改訂される理由

LEEDは、評価システムを改訂することで知られています。しかもバージョンアップを繰り返すなかで、新たに項目を追加するなど、基準を厳格化しています。企画・設計・建設・運用など、それぞれの段階におけるレベルアップを促すことで、よりサステナブルな建築物の普及を目指しています。

LEED v4が目指すもの

LEED v3からv4への主な変更項目は、以下のとおりです。

  • 評価システムの体系化
    評価対象のフェーズ(新築・既存)、範囲(街区・建築・内装)、用途ごとに 5つの評価システムを設定
  • 新規対象用途の追加
    データセンター、倉庫、宿泊施設、中層住宅が対象用途として追加
  • 評価の厳格化
    必須項目数の増加と加点項目の評価基準値の引き上げ
  • 国際化への対応
    評価基準の多様化と対象となる認証の多様化

最新バージョンであるLEED v4では、7つの方向性が示されています。
(1) 地球規模の気候変動に対する貢献
(2) 個人の健康と幸福の増進
(3) 水 資源の保護と保全
(4) 生物多様性と生態系の保護と増進
(5) グリーンエコノミーの構築
(6) 持続可能で再生的な材料循環の推進
(7) 社会的公正、環境的公正、コミュニティでの生活の質の増進

評価項目では、

  • 立地と交通:十分な公共交通へのアクセス、周辺密度と利用の多様性など
  • 持続可能な敷地:建設活動での汚染防止、環境面(土壌汚染)の敷地評価など
  • 水の効率的利用 :屋内外の水利用削減、建物レベルの水量測定など
  • エネルギーと大気:最低限求められるエネルギー性能、建物レベルのエネルギー測定など
  • 材料と資源:リサイクル可能資源の収集と保管、建設および解体廃棄物の管理計画など
  • 室内環境品質:最低限求められる室内空気質性能、環境中のタバコ煙の管理など

 などが必須項目として挙げられています。
地球環境だけでなく、コミュニティの質や個人の健康増進などにも貢献する建築物の実現のため、設計時だけでなく運用時の性能も重視して、測定や性能検証が行われます。

日本におけるLEED

日本におけるLEEDは、先述した「日本生命 丸の内ガーデンタワー」や「イオンモール」をはじめ、「二子玉川ライズタワー」「横浜野村ビル」などのオフィス、「スターバックス」「ナイキ」などの小売店舗、「グローバル・ロジスティック・プロパティーズ」「近鉄エクスプレス」などの物流施設、そのほかにも「大林組技術研究所」や「京都大学」など、幅広い建築物で取得されています。
また、国土交通省が環境・健康・快適性に優れた不動産評価の基盤整備を検討しており、国内でもLEEDをはじめとする環境不動産の認証取得への注目は、引き続き高まっていくとみられます。

技術監査事業部 玉川冬紀

 


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