既存建物の遵法性調査で現地調査を行なった際に確認された「法適合していない事例」についてご紹介します。
現地調査で確認された2種類の違法状態
現地調査で確認された法適合していない事例は、大きく2つのケースに分けられます。
(1)管理上違法状態になっているケース
建物利用上の理由から違法状態が発生しているケースです。
例1:階段や廊下に物が置かれ、避難上の支障になっている
例2:常時閉鎖式防火戸にストッパーが設置され、常時開放状態になっている
管理上の問題で違法状態になっているケースでは、避難上支障となっている障害物を撤去するなど、違法状態の是正は比較的容易です。
(2)改修により違法状態になっているケース
検査済証取得後に行なった改修で、違法状態が発生しているケースです。
例:間仕切りの設置で、排煙が確保されなくなっている
改修によって違法状態になっているときは、大がかりな是正工事が必要な場合があります。
以下、事例でご説明します。
改修による違法状態の事例
間仕切り変更の改修工事により排煙区画が法適合しなくなった事例「天井チャンバー方式の排煙設備を設置していた事務所ビル」です。
1.改修前
天井チャンバー方式は、天井内をチャンバー(箱型の空間)にして、天井にスリットなどの開口部を設置し、天井内の排煙口から排煙を行うシステムです。天井チャンバー方式は、居室の排煙区画と天井内の排煙区画が一致している必要があります。
図1 天井チャンバー方式
図2 改修前の排煙計画
■平面図
■断面図
図面上の排煙計画…天井内にも防煙壁を設けることで防煙区画が成立している。
建築基準法施行令 第126条の3(排煙設備の構造)
第1項 前条第1項の排煙設備は、次に定める構造としなければならない。
第一号 建築物をその床面積500㎡以内ごとに、防煙壁で区画すること。
2.改修の実施
新しく入ったテナントが間仕切りを変更し、防煙垂れ壁を撤去しました。
図3 改修後
■平面図
■断面図
改修工事により、居室部分排煙区画と天井内排煙区画が一致しなくなり、排煙区画面積が不適法となりました。
テナントA
防煙垂壁を撤去したことで、防煙区画面積が500㎡を超えるため建築基準法不適合
テナントB
テナントAが防煙垂壁を撤去したことで、防煙区画面積が500㎡を超えるため建築基準法不適合
3.適法化の条件
この事例の場合、不適法部分を適法化するには、大掛かりな再改修が必要と考えられます。
4.不適法を防止する方法
改修を行う際は、工事に着手する前に遵法性調査(事前に机上で法適合性を確認する)を行うことで、法律的な問題の発生を防ぐことができます。
ビューローベリタスでは、前述のような問題を防ぐために、建築基準法・消防法を基準とし、改修計画内容を机上確認して問題点や改善すべき点について報告するサービス「遵法性調査」を提供しております。
既存建物についてお悩みの点がございましたら、ぜひご相談ください。