建築物の「遵法性調査」と「『検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン』に基づく調査」(以下、「ガイドライン調査」)は、ビューローベリタスが提供するサービスです。2019年に入り、依頼内容に変化が見られるようになりました。その動向についてレポートします。
遵法性調査
ビューローベリタスへの従来の調査依頼案件のほとんどが、設計事務所またはゼネコン設計部門の設計者からでした。ところが現在では、企業(事業者)から直接の問い合わせや依頼が増えつつあります。問い合わせ元には世界的な大手メーカーや病院、大学、ホテルなどの事業者が含まれています。設計者から事業者へと問い合わせや依頼がシフトしている背景には次のような理由が考えられます。
設計者からの相談は、はじめに改装や増改築の計画が前提になっているケースが多く、他方、事業者からの問い合わせの主な目的はリスクの把握と是正検討にあるようです。 自社社員やテナントなどのワーカーに正しい労働環境が与えられているか、万が一の事故や事件などが生じた時に所有者・管理者として説明責任が全うできる状況であるか―などを事業者は把握しておく必要があるようです。
ガイドライン調査
過去に何らかの理由によって完了検査が受検できなかった建築物の場合、改めて当時の法律に適合化させて必要な用途変更や増築申請手続きを進めることになります。しかし、利用内容や問い合わせ内容が変化していることがあります。 以前は、増築や用途変更を前提とした依頼がほとんどでした。ところが、最近では、検査済証のない建物のガイドライン調査を事前に実施し、その建物の不動産価値を把握します。そして、改修によって違反が是正できるか否かを判断したうえで、中長期の建て替えなどの検討を行う案件が増加しています。
24時間営業の店舗やシェアオフィスなど、新しい文化に対応した業態が生まれ、建物の利用形態が様変わりしています。それに伴い、増築や用途変更などのニーズが高まっています。また、SDGs・ESG・GRESB・働き方改革などの今日的キーワードに象徴されるように、社会の新しい需要はさらに多様化・高度化しています。「遵法性調査」と「ガイドライン調査」は以上のような建築物の遵法性遵守の根底を成すもので、将来ますます必要性が高まるものと考えています。