不動産におけるESG投資とは

ESG投資とは

環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の頭文字を取ったもので、この3つの項目を重視した投資のことを指します。
2006年に政府により打ち出された責任投資原則(PRI)で、「"ESGを重視した投資をする"ことが、投資家がとるべき行動」として提唱されるようになったことから、不動産においてもESG を重視する動きが活発となっています。2015年にはSDGsが採択され、世界最大の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名をしたことを契機に日本の不動産業界でもESG投資が加速しています。
今回は不動産におけるESG投資加速の背景やメリット、具体的な取組例を解説いたします。

210415_01.jpg

責任投資原則(PRI)の6項目
1.投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込む
2.活動的な所有者となり所有方針と所有習慣にESG問題を組み入れる
3.投資対象の企業に対してESG課題についての適切な開示を求める
4.資産運用業界において本原則が受け入れられ、実行に移されるように働きかけを行う
5.本原則を実行する際の効果を高めるために協働する
6.本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告する

1.なぜESG投資を行う必要があるのか

2008年以前は「短期的に利益を目指すこと」が投資家の考えでした。
しかし、リーマンショック以降、この短期的利益の考えは非常にリスクが高く反省するべきと捉えられ、「長期的に利益を目指す投資」にシフトしていきました。
安定した利益を長期的に得られることから、多くの投資家が責任投資原則(PRI)に賛同し、「持続可能な事業に投資する」ということを世界の共通認識としてESG投資は重要視され始めました。

2.ESG投資を行うメリット

ESG投資を行うメリットは大きく次の投資家側と経営側の2つに分けられます。

投資家側のメリット

  • ・安定した投資リターンを長期的に得られる
  • ・投資活動が社会貢献に寄与する
  • ・社会課題解決に向けて新規事業を創出し、未来のキャッシュフローが増強する

経営側のメリット

  • ・ステークホルダー(利害関係者)から受けるイメージの向上
  • ESG経営により社会貢献をすることで企業の信頼性が高まり、資金調達の面で有利に働く
  • ・将来的なキャッシュフローに好影響をもたらす可能性がある
  • ・ESGの価値観が社内に浸透し、労働環境が改善される

ESGに配慮している企業は、持続可能性が高く事業縮小の懸念が少ないと評価され、長期的に社会から受け入れられる企業といえます。事業そのものの持続可能性が高いことから、長期にわたって利益をもたらすという点も大きなメリットになり得るでしょう。

3.不動産におけるESG投資

次に不動産におけるESG投資の具体的な取組例を紹介します。

前述のとおり、投資家が投資先に対してESG配慮を求める動きが拡大しており、そのなかでも不動産は環境や社会に関する課題解決に貢献できるポテンシャルが大きく、中長期的なリターンを確保できる可能性があり重要な投資対象となっています。

不動産においてESG投資を行う際はリスク・リターン・社会的インパクトの3つの軸を意識する必要があります。

210415_02.png

出典:省資料(ESG不動産投資のあり方検討会)

不動産において具体的なESG投資の例は以下の3つです。

1)環境負荷の少ない建物の建築

省エネルギー性能が高い建物、環境負荷の少ない建物は、光熱費削減、CO2排出量の削減につながり、中長期的に不動産価値にも反映される可能性があります。
また、不動産の ESG への考慮を評価するために有効なのは、建物の評価・認証制度です。代表的な認証制度としては、建物の省エネルギー性能を評価する米国の ENERGY STARや日本のBELS、総合的な環境性能を評価する米国の LEEDや日本の CASBEEがあります。
上記のような評価・認証制度を受ける不動産を環境不動産と呼びます。

■省エネルギー性能を評価する認証■総合的な環境性能を評価する認証
icon_1.pngicon_2.png icon_4.png

2)空き家の再利用

日本の人口は減少傾向が続いており、空き家の増加が社会問題となっています。
この社会問題を解決できる投資手法が空き家の再利用を目指した不動産投資です。
空き家をリノベーションして用途変更や賃貸に出すことで空き家の再利用につながります。

3)地方活性化につながる不動産投資

地方でも魅力的な不動産開発をすることで活性化につなげることが可能です。
観光資源や魅力的な施設や居住空間があることで、人が集まり、移住する人も増えていくことが予想されます。人が集まる魅力的な街にするための不動産投資は社会貢献にもつながる投資で、ESG投資の一つといえます。

→ 環境不動産

建築物・不動産技術監査に関するお問い合わせはこちら

TEL 03-6402-5977(平日9:00~17:30)