雑居ビルの避難施設等に関する遵法性調査事例

遵法性調査とは、既存建物を建築基準法などの法令やお客様の指定した法令に照らし合わせて適合性を調査する業務です。

企業に求められるコンプライアンスの内容は、建設時や既存建物売買・状況確認時、また労働安全への取り組み時において高度かつ多岐にわたっています。これら全内容を企業が独自に実践するのは容易ではありません。ビューローベリタスは第三者の立場からコンプライアンスに関する基準と実際の運用状況とのギャップを調査し、企業の経営リスクの低減に寄与しています。

小規模な雑居ビル等の遵法性調査においてよくある指摘事項のうち、避難施設等に関連するものを解説します。

たとえば、以下のような小規模な雑居ビルの場合は、階段、排煙設備、非常用の照明装置、非常用の進入口に代わる窓、敷地内通路に関しどのような規定が適用されるかを見てみましょう。

→ 遵法性調査

調査対象建物の概要

  • 地上6階建
  • 6階:事務所:5階:キャバレー
    4階・3階:ナイトクラブ
    2階:カフェー
    1階:物販店舗
  • 各階の居室の床面積:180㎡、延べ床面積合計1,250㎡
  • 主要構造部:耐火構造
  • 避難上有効なバルコニー設置あり、屋外避難階段設置あり

1.階段

建築基準法では、建築物の避難階以外の各階の用途、その階の居室の床面積の合計、主要構造部の耐火仕様、避難上有効なバルコニーの有無、屋内避難階段・屋外避難階段の有無によって、2以上の直通階段(避難階以外から避難階または地上に通ずる階段をいう)が必要かどうかが決まります。
事例の建築物は6階に事務所、5階から2階にキャバレー、ナイトクラブ、カフェーを有しますが、各階の居室の床面積の合計が200㎡以下で、その階に避難上有効なバルコニーと屋外避難階段が設けられているため、階段は1か所で足ります。

[関連法令]

法第35条、令第121条、令第123条

2.排煙設備

事例の建築物は、法別表第1(い)欄(4)に掲げる用途に供する特殊建築物で、延べ面積が500㎡を超えるものに該当するため、排煙設備の設置を要します。

[関連法令]

法第35条、令第126条の2、令第126条の3

3.非常用の照明装置

事例の建築物は、法別表第1(い)欄(4)に掲げる用途に供する特殊建築物の居室、階数が3以上で延べ面積が500㎡を超える建築物の居室に該当するため、非常用の照明装置の設置を要します。

[関連法令]

法第35条、令第126条の4、令第126条の5

4.非常用の進入口に代わる窓

建築物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階には、道または道に通ずる幅員4m以上の通路その他の空地に面して、原則、非常用の進入口(*1)または非常用の進入口(*2)に代わる窓の設置を要します。
事例の建築物は、3階から6階の部分がこれに該当します。

(*1) 非常用の進入口:間隔40m以下ごと、高さ1.2m以上×幅80㎝以上、床面から80㎝以下
(*2) 非常用の進入口に代わる窓:10m以内ごと、高さ1.2m以上×幅80㎝以上、または直径1m以上の円が内接することができるもの

[関連法令]

法第35条、令第126条の6、令第126条の7

5.敷地内の通路

法別表第1(い)欄(4)に掲げる用途に供する特殊建築物、階数が3以上である建築物に該当するため、敷地内には、屋外避難階段、屋外への出口から道等通にずる幅員が1.5m以上の通路を設けることを要します。
事例の建築物は、屋外避難階段、屋外への出口から道等通ずる幅員が1.5m以上の通路の設置を要します。

[関連法令]

法第35条、令第128条

現地調査においてよくある指摘事項

次に、事例の建築物の遵法性調査を行なった場合に、階段、排煙設備、非常用の照明装置、非常用の進入口に代わる窓、敷地内通路に関しどのような指摘事項が多く見受けられるかを解説します。

1.階段

  • 階段室内に物品(段ボールケース、食材、飲料物など)が置かれていて避難上支障がある
  • 階段に至る出入口扉部分や、出入口に至るまでの廊下に物品が置かれていて階段の出入口がわからない、階段に到達できない
  • 屋外避難階段から2m未満の距離に換気設備の換気口が設けられている

2.排煙設備

  • 模様替えにより排煙設備のない部屋がある
  • 模様替えにより自然排煙の排煙窓が塞がれている
  • 自然排煙窓をあけるための手動開放装置が什器の設置等により操作できない

3.非常用の照明装置

  • 模様替えにより非常用の照明装置のない居室、居室から階段に至る通路がある

4.非常用の進入口に代わる窓

  • 非常用の進入口に代わる窓の有効開口寸法が不足している
  • 模様替えにより非常用の進入口の内側に壁が設けられている

5.敷地内の通路

  • 屋外避難階段から道に至る通路に設備機器を設置したため、幅員が不足している

多くの建物は、竣工当時は適法な状態であったとしても、長い年月を経ていくなかで、模様替えや間仕切変更、増改築等が行われたり、所有者が変わり用途変更が行われたりします。

その過程で、本来必要であった確認申請手続きがされていなかったり、法に適合した形での増改築等が行われていなかったりする場合があります。また、建築物の所有者等の使用状況によって法に適合しない状態になっていることもあります。
建築基準法第8条により、建築物の所有者、管理者または占有者は、その建築物の敷地、構造および建築設備を常時適法な状態に維持するよう努めることを求められています。

ビューローベリタスのサービス

上記でご紹介した事例やその他関連する事例について、ビューローベリタスでは「遵法性調査サービス」を提供しています。
具体的には、建築基準法・消防法を基準として建物の現状を精査し、問題点や改善すべき点について調査内容を報告します。現状の建物の法適合性を確認されたい場合は、遵法性調査の依頼をご検討ください。

→ 遵法性調査

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