政府は2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの“排出を全体としてゼロ*” にする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言するとともに、2021年4月、2030年度の温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すことを表明しました。
経済産業省は、カーボンニュートラル目標の実現に必要な経済社会システム全体の変革を推進するため、自主的な排出量取引(GX-ETS)を含む4つの取り組みを行う場として「GXリーグ」を設立しました。
*二酸化炭素などの温室効果ガスの「排出量」-植林、森林管理などによる「吸収量」=「ゼロ」
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GXリーグの概要
GXリーグとは
2022年2月1日、経済産業省から「GXリーグ基本構想」が発表されました。GXとはGreen Transformation(グリーントランスフォーメーション)の略称です。
基本構想の中でGXリーグは、持続可能な成長実現を目指す企業が、同様の取り組みを行う企業群や官公庁、大学と共に経済社会システムの変革や新たな市場を作るための実践を行うために協働する場として位置付けられています。
GXリーグとは、GXに取り組む官公庁・大学と共に「GX化へ果敢に取り組み、国際ビジネスで勝てる企業が、GXを先導する」ことを目的とした仕組みともいえます。
GXリーグでは、以下の4つの取り組みが行われます。
- 自主的な排出量取引(GX-ETS)
- 市場創造のためのルール形成
- ビジネス機会の創発
- GXスタジオ(参画企業間の交流の場
GX-ETSはGXリーグにおける排出量取引のこと
GX-ETSとは、GXリーグにおける自主的な排出量取引を行う市場で、排出量が多い企業が排出量の少ない企業から排出権を購入したり、自社で排出量を削減したりすることで、排出量を削減する仕組みです。
排出量が前年度と比較して減った企業はその差分を「超過削減枠」として売却できたり、逆に削減がうまくいかなかった企業は他社からその「超過削減枠」を購入したり、カーボンクレジットと呼ばれるものを購入するなどしなければなりません。
参画企業は自らカーボンニュートラルに向けて削減目標を掲げ、その達成に向けた取り組みの推進・開示を行なっています。
GX-ETS制度
GX-ETSでは参画企業へ国内の直接・間接排出の排出量実績を算定し、実績を報告することが求められます。
また、排出量の結果については2021年度の直接排出量が10万t-CO2e以上の参画企業が作成した算定結果に対し、第三者検証を必須事項と定めています。
参画企業の排出量の違いによる取り扱い
Group G | Group X | |
---|---|---|
対象 参画企業 |
組織境界における2021年度の直接排出量が10万t-CO2e以上の参画企業 | 組織境界における2021年度の直接排出量が10万t-CO2e未満の参画企業 |
項目 | Group G | Group X | |
---|---|---|---|
1.プレッジ | 国内直接・間接排出それぞれについて、2023年度および2025年度の排出削減目標、第1フェーズ(2023年度~2025年度)の排出削減目標の総計を設定 | 必須 | 必須 |
基準年度排出量の設定 | 原則:2013年単年 例外:2014年度~2021年度を基準年度とする場合、基準年度を含む連続した3か年度平均 |
原則:2013年単年 例外:2014年度~2021年度を基準年度とする場合、基準年度単年または基準年度を含む連続した3か年度平均平均 |
|
2.実績報告 | 国内直接・間接排出の排出量実績を算定・報告 | 必須 | 必須 |
排出量算定期間 | 年度(4/1~3/31) | 年度(4/1~3/31) ※任意の12か月間でも可 |
|
排出利用量の算定結果に対する第三者検証 | 必須 | 任意 | |
排出量報告期限 | 毎年度終了後の10月末まで | 毎年度終了後の10月末まで ※任意の機関を設定した場合は、終了後7か月が経過する日まで |
|
3.取引実施 | 自主目標を達成できなかった場合 | 超過削減枠や適格カーボン・クレジットの調達または未達理由を説明 | 超過削減枠や適格カーボン・クレジットの調達または未達理由を説明 |
超過削減枠の創出 | 可能 | 不可 | |
超過削減枠の売買 (超過削減枠法人口座に保有) |
可能 | 可能 ※口座開設時に申請が必要 |
|
4.レビュー | 目標達成状況および取引状況の、GXダッシュボードでの公表 | 必須 | 必須 |
GXリーグへの参画と取り組み
GXリーグ参画企業には、取り組みの一つとして自らの排出量削減に向けた取り組みが求められています。
GXリーグへ参画するには
GXリーグへの参画には、下記の要件を満たす企業が、GXリーグ事務局に申請し審査を経た後、GXリーグ参加企業として登録をする必要があります。
- 法人格を有する、または外国会社に該当し、日本国内で事業を展開していること
- 「GXリーグ参画企業に求められる取り組み」に賛同し、必須事項の実施にコミットし、任意項目の実施についても努力すること
- GXリーグ事務局が定める運営規程および今後GXリーグで実施される取り組みに関して将来制定される規則のうち、自らが参加する取り組みに関する事項の厳守に承諾すること
- 以下の項目には該当せず、申告に虚偽があった場合に、事務局が行なった一切の措置について異議を申し立てないことに同意すること
- 反社会的勢力または反社会勢力でなくなった日から5年を超過していない
- 法人でその役員のうちに反社会的勢力等がある
- 反社会的勢力等がその事業活動を支配する
GXリーグへ参画した企業がやるべきこと
自らの排出量削減に向けた取り組みとして以下が挙げられます。
- 排出量取引量制度(GX-ETS)における削減目標として、国内の直接・間接排出それぞれに関する2030年度排出量削減目標および中間目標の策定
- 2050年以前のカーボンニュートラルの宣言およびその達成に向けた自社のトランジション戦略の策定・公表
- GX-ETSにおける排出量削減目標に対する進捗および超過削減枠やカーボンクレジットの取引状況の公開へのコミット
- (推奨)GX-ETSにおける排出削減目標のより野心的な水準への引き上げ
GXリーグ参画以外でカーボンニュートラルの助けとなる仕組み
GXリーグへの参画以外で、カーボンニュートラルを目指す際に助けとなる仕組みとして地球温暖化対策計画書制度があります。
名称や具体的な制度内容は各地方公共団体で異なりますが、地方公共団体が域内の事業者に対して温室効果ガス排出量やその抑制方策等を盛り込んだ計画書・報告書の策定と提出を求め、計画と報告を通じて温室効果ガスの排出抑制への計画的な取り組みを促す制度です。
例として東京都と埼玉県の制度を紹介します。
東京都/温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度
東京都の温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度とは、2010年度に開始した制度です。この制度は、排出量が多い大規模事業所を対象に、5年間の一定期間ごとに削減義務率を設けて総量削減を義務付けています。
対象となるのは、燃料・熱・電気の使用量が原油換算で年間1,500kL以上の事業所(業務・産業部門)です。
埼玉県/目標設定型排出量取引制度
埼玉県の目標設定型排出量取引制度とは、2013年度に開始した制度です。この制度は、排出量が多い大規模事業所を対象に排出量削減目標を設定することで、排出量を削減する仕組みです。
対象となるのは、燃料・熱・電気の使用量が原油換算で年間1,500kL以上の事業所(業務・産業部門)です。
上記制度は検証機関の検証を受けることが必要です。
ビューローベリタスでは、これらの検査業務のサポートも行なっています。
詳しくは以下のページをご確認ください。
また、温室効果ガス総量排出量確認業務条例により温室効果ガス総量排出量の届出義務のある事業所向けに、必要なデータや異常値の有無を確認し、データの入力と地域条例に対応した報告書の作成を行なっています。
詳しくは以下のページをご確認ください。
GXに関するQ&A
Q. 企業がGXに取り組むメリットは何ですか?
A. 補助金などの公的予算の投入、企業ブランドイメージの向上、コストの削減などが期待できます。
Q. 日本においてGXリーグに参加している企業はどこですか?
A. トヨタ自動車株式会社、デロイトトーマツコンサルティング合同会社、日本電信電話株式会社、株式会社みずほファイナンシャルグループ、三菱商事株式会社、清水建設株式会社など製造業からサービス業まで幅広く多くの企業が参加しています。
2023年6月30日現在、560を超える企業が参加し、日本のGHG(二酸化炭素などの温室効果ガス)排出量の4割以上を占める企業が参画しています。
以下のページで紹介されています 。
→ GXリーグ公式WEBサイト「MEMBER」
GXリーグの今後
GXリーグについては検討段階の内容もあり、今後追って内容が公表される予定です。
公表予定の内容:
- GXリーグ基準年度排出量算定・報告ガイドライン
- GXリーグ算定・モニタリング・報告ガイドライン
- GXリーグ第三者検証ガイドライン
- 超過削減枠登録簿規程
GXリーグに関してはGXリーグ公式WEBサイトより内容をご確認いただけます。