「既存建築物の現況調査ガイドライン」の概要

国土交通省は2024年12月6日、既存建築物の増築、改築、移転等を行う際の建築基準法への適合状況を調査する手順や方法を解説した「既存建築物の現況調査ガイドライン」(以下、「新ガイドライン」といいます)を新たに作成し、関係機関に通知しました。
これは、平成7年4月の建築基準法改正に伴い、これまで確認検査の特例(法6条の4第3項)の対象となっていた木造2階建てなどが特例の対象から外れ、増築、改築または移転の際に建築確認・検査における審査・検査の項目が増加するほか、大規模の修繕または大規模の模様替えの場合には新たに建築確認・検査を受けることが必要となるため、既存建築物の確認審査等の円滑な運用および既存建築物の活用の促進を図る目的で、通知されたものです。

この「新ガイドライン」によって、検査済証がない建築物の場合でも、当該建築物が違反建築物と直ちに判断されるわけではなく、建築基準法令の規定(既存不適格である規定を除く)に適合しない部分がある場合でも、建築主事や指定確認検査機関による確認・検査を受けることで、適法に増築等を行うことが可能であり、必ずしも確認審査等の前に、特定行政庁において当該建築物が違反建築物であるか否かを確定することを要しないとされました。
なお、令和7年4月1日をもって従来の「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」は、「新ガイドライン」に統合・一本化されます。

新ガイドライン」に基づく調査の流れは以下のとおりです。

現況調査では、次の2つの調査を行います。

調査1:検査済証の交付状況等の調査
調査2:現地調査

現況調査の流れ
出典:「既存建物の現況調査ガイドライン」(第1版)

調査1 検査済証の交付状況等の調査

計画建築物に関する直近の建築等の工事に係る検査済証の交付状況または当該工事の着手時について調査します。

調査1-① 直近の建築等の工事に係る検査済証の交付状況の調査

計画建築物の所有者等が保有している直近の建築等の工事に係る検査済証を確認します。

調査1-② 直近の建築等の工事の着手時の調査

調査1-①により直近の建築等の工事に係る検査済証の交付が確認できない場合は、当該工事の着手時を調査し、特定します。

調査2 現地調査

現地調査に先立ち、直近の建築等の工事における計画建築物の図面や、計画建築物に使用されている建築材料や建築設備の仕様、性能が記載された書類、特定行政庁による許可・認定通知書その他の図書を可能な限り用意します。
現地調査では、現行の建築基準法令の規定への適合状況を確認します。

調査2-① 直近の建築等の工事に係る検査済証の交付が確認できた場合

直近の建築等の工事に係る検査済証の交付が確認できた場合は、計画建築物は当該工事の着手時の規定に適合していると判断できます。 そのうえで、直近の建築等の工事の着手時以降に改正された規定または関係する都市計画、区域、数値等が決定もしくは変更された規定(以下、「既存不適格である可能性のある規定」)以外の規定については、現行の建築基準法令の規定にも適合していると判断できます。
調査2-①の現地調査では、既存不適格である可能性のある規定を対象に、現行の建築基準法令の規定への適合状況を調査します。
現地調査の結果は次のように分類します。

不適合(既存不適格) 直近の建築等の工事の着手時以降に改正された現行の建築基準法令の規定に不適合となった規定
不適合(その他) 改変により建築基準法令の規定に適合しない規定
不明 調査ができなかった規定
適合 上記以外の規定

「不明」となった規定については、「適合」または「不適合(既存不適格)」であることから、「不適合(既存不適格)」とみなして既存建築物の緩和を適用することが考えられます。

調査2-② 直近の建築等の工事に係る検査済証の交付を受けていないが、当該工事の着手時を特定できる場合

検査済証の交付が確認できない建物については、審査省略規定を含むすべての現行の建築基準法令の規定への適合状況を調査します。
調査により不適合となった規定のうち、既存不適格である可能性のある規定を対象に直近の建築等の工事着手時の規定への適合状況を調査し、既存不適格であるか否かを確認します。
現地調査の結果は次のように分類します。

適合 調査の結果、現行の規定に適合している
不適合(既存不適格) 上記以外で直近の建築等の工事の着手時の建築基準法令の規定に適合している規定
不適合(その他) 適合していない規定
不明 調査ができなかった規定

ア)直近の建築等の工事に係る確認申請書の副本の添付図面がある場合
当該図面と現地の計画建築物を照合することにより、計画建築物の建築基準法令の規定への適合状況を調査します。

イ)ア)以外の図面がある場合
竣工図面などももとに調査を行う場合は、図面上で建築基準法令の規定への適合性が確認できた部分について現地の計画建築物と照合することにより調査します。

ウ)図面がない場合
現地の計画建築物を実測・調査して現況の図面を作成し、当該図面上で建築基準法令の規定への適合性を調査します。

調査2-③ 直近の建築等の工事の着手時を特定できない場合

図面がある場合は調査2-②のイ)により、図面がない場合はウ)により調査を行います。
現地調査の結果は次のように分類します。

適合 適合している規定
不適合(その他) 適合していない規定
不明 調査ができなかった規定

詳しくは国土交通省が公表した「既存建物の現況調査ガイドライン」(第1版)をご確認ください。

参考

→ 建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)

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