建物の外側に面しており、壁や屋根で覆われていない廊下は、一般的に「外廊下(吹きさらしの廊下)」と呼ばれます。日当たりや風通しが良い特徴があるほか、一定の条件を満たす場合は「屋外空間」と見なされ、床面積には含まれません。
ただし、設計や構造の状況によっては、一部が床面積に算入されるケースもあります。そのため、「どこまでが床面積に含まれるのか」で判断に迷う方は多いでしょう。
本記事では、床面積の基礎的な考え方を踏まえながら、外廊下が床面積に含まれない条件や定義、具体的な数値を用いた計算方法を解説します。これからマンションやアパートの建築を検討している方は、ぜひご一読ください。
建築基準法における床面積とは
建築基準法上、床面積は「建物の各階において、壁や柱などの区画の中心線で囲まれた部分を真上から見たときの面積」を指し、建ぺい率や床面積の算出に用いられます。
建築基準法施行令第2条第3号および第4号による床面積の定義は、下記のとおりです。
三 床面積 建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。
四 延べ面積 建築物の各階の床面積の合計による。ただし、法第五十二条第一項に規定する延べ面積(建築物の容積率の最低限度に関する規制に係る当該容積率の算定の基礎となる延べ面積を除く。)には、次に掲げる建築物の部分の床面積を算入しない。
イ 自動車車庫その他の専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設(誘導車路、操車場所及び乗降場を含む。)の用途に供する部分(第三項第一号及び第百三十七条の八において「自動車車庫等部分」という。)
ロ 専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分(第三項第二号及び第百三十七条の八において「備蓄倉庫部分」という。)
ハ 蓄電池(床に据え付けるものに限る。)を設ける部分(第三項第三号及び第百三十七条の八において「蓄電池設置部分」という。)
ニ 自家発電設備を設ける部分(第三項第四号及び第百三十七条の八において「自家発電設備設置部分」という。)
ホ 貯水槽を設ける部分(第三項第五号及び第百三十七条の八において「貯水槽設置部分」という。)
ヘ 宅配ボックス(配達された物品(荷受人が不在その他の事由により受け取ることができないものに限る。)の一時保管のための荷受箱をいう。)を設ける部分(第三項第六号及び第百三十七条の八において「宅配ボックス設置部分」という。)
引用:建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)|e-Gov法令検索
施行令第2条第1項第3号で規定されているように、床面積とは建物の各階において壁や柱などの区画の中心線で囲まれた箇所の水平投影面積(建物の真上から光を照らした際に影となって映る面積)を指します。
したがって、吹きさらしとなっている外廊下やバルコニー(外壁からの距離が2mを超える部分を除く)など、屋外と見なされる箇所は床面積には算入されません。
一方で、施行令第2条第1項第4号により、容積率を求める際にはビルトインガレージ(自動車車庫)や備蓄倉庫などの床面積を延べ面積から除外できます。
延べ床面積は家づくりや不動産取引で欠かせない大切な指標なので、正確な算定が必要です
容積対象面積との違い
容積対象面積とは、建物の容積率を計算する際に用いる指標です。「各階の延べ床面積の合計」から「容積率の計算に算入しない部分の面積」を差し引くと算出できます。
容積率とは、建物全体の床面積の合計を、その敷地面積で割った割合のことです。用途地域ごとに容積率の上限が設けられており、その上限を超えない範囲で建築物を建てなければなりません。
外廊下(吹きさらしの廊下)とは
外廊下とは、建物の外部に面して設置された廊下で、常に外気にさらされることから「吹きさらしの廊下」「開放廊下」とも呼ばれます。日当たりや風通しが良く、開放感があるのが特徴です。
延べ床面積に含まれない外廊下の条件
吹きさらしで屋外空間として扱われる外廊下は、延べ床面積の算入対象ではない旨が建築基準法関連通達で定められています。
建設省(現・国土交通省)通達における定義を抜粋したので、きちんと押さえておきましょう。
外気に有効に開放されている部分の高さが、一・一m以上であり、かつ、天井の高さの二分の一以上である廊下については、幅二mまでの部分を床面積に算入しない。
この条件を満たしている外廊下は、開放性のある屋外空間と判断されるため、原則として延べ床面積に含まれません。
「外気に有効に開放されている部分」の定義
以下の条件を満たす場合、建設省(現・国土交通省)通達にある「外気に有効に開放されている部分」に該当します。
- 1.隣地境界線から外廊下までの距離が0.5~1.0m以上である
- 2.同じ敷地内の他の建築物、または当該建築物の他の部分から外廊下までの距離が2m以上である
いずれも各階および廊下の部分ごとに距離の計算を行うので、算定時は注意しましょう。
また、開放部分には住戸のプライバシー保護の役割を担う目隠し、風雪の吹き込みを避ける風防スクリーンなどを設置しても構わないとされています。
なお、上記2つの条件は自治体によって異なるケースがあります。建築時の設計やスケジュールに狂いが生じないよう、あらかじめ自治体で確認しておきましょう。
外廊下(吹きさらしの廊下)の床面積の計算方法
基本的に外廊下は延べ床面積に含まれませんが、一定の条件を満たす場合には算入しなければなりません。
ここでは、外廊下が床面積に算入されるケース別に床面積の計算方法を解説します。
(1)幅2mを超える外廊下の場合
外廊下の幅が2m(芯々)を超えているときは、2m超の部分のみ延べ床面積に算入します。
ただし、廊下の端部は外気に開放されたスペースと考えられるので、端部から2m分は延べ床面積には含まれない点を覚えておきましょう。
例えば、外廊下が幅3m・距離20mであれば、延べ床面積に加わる分は以下の計算式で算出できます。
(3m-2m)×20m-(2m×2か所)=16㎡
(2)隣地境界線が外廊下に対して斜めの場合
外廊下に対して隣地境界線が斜めに走っている場合、場所によって外廊下と隣地境界線の距離が異なることがあります。この場合、上図の斜線部のように隣地境界線からの距離が0.5m以内の範囲をすべて延べ床面積に算入します。
例えば、外廊下が幅2m・距離20m、うち隣地境界線からの距離が0.5m以内の部分が8mである場合、次のように計算します。
床面積に含まれる部分:2m×8m=16㎡
含まれない部分:2m×(20m-8m)=24㎡
なお、隣地境界線から外廊下までの距離の基準値は自治体によって異なるので、事前にウェブサイトや窓口などで確認しておきましょう。
(3)外廊下が道路や水路に面している場合
外廊下が道路や水路に面している場合は、外廊下から道路・水路の反対側の境界線までの距離で算定します。例えば、外廊下から隣地境界線との距離が1m以上必要であり、対面に水路が設けられている状況であれば、次のような基準をもとに判断できます。
外廊下から水路までの距離と水路幅の合計が1m以上なら不算入、1m未満なら算入
仮に幅2m・距離20mの外廊下が水路に面しており、水路から1m離れていない箇所の距離が5mという状況の場合、床面積に含まれる部分と含まれない部分は次のとおりです。
床面積に含まれる部分:2m×5m=10㎡
含まれない部分:2m×(20m-5m)=30㎡
ビューローベリタスジャパンが行う「遵法性調査」とは
ビューローベリタスジャパンは、建築物や不動産に関する技術監査を専門とする企業です。
ビューローベリタスジャパンが行う「遵法性調査」では、建築基準法などの法令やお客様が提示した基準と既存建物を照合し、その適合性を調査します。資料調査・ヒアリング・現地調査など、第三者の視点から入念なチェックを行うため、品質確保に有効です。
外廊下の床面積算定基準は自治体によって異なるので、判断が難しい場合もあります。建築計画をスムーズに進めたい場合は、専門家による遵法性調査の活用を検討するとよいでしょう。
まとめ
外廊下は、原則として延べ床面積に含まれません。ただし、高さや幅、隣地境界線との距離など、一定の条件を満たす場合には例外的に算入されることがあるため、建築計画を進める前に確認しておくことが大切です。
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