「遵法性調査」とは、対象とする建物が建築基準法などの関連法規に適合しているかどうかを確認する調査です。遵法性調査は、なぜ必要なのでしょうか。それは、現在建っている建物にはすべての法規を満たしてはいないものもあるからです。
例えば、近年でこそ確認申請数に対する完了検査実施数の比率は約9割を占めますが、平成10年時点では4割を切っていました。およそ6割の建物は検査済証を受けていなかったことになり、法に適合していない可能性はその分高くなります。
特定行政庁(建築主事)・指定確認検査機関における検査済証交付件数・完了検査率の推移
(出典:国土交通省「効率的かつ実効性ある確認検査制度等のあり方の検討」)
また、竣工当初は問題なかった建物でも、使用している過程でレイアウトや用途を変更したため法に適合しなくなっている可能性も考えられます。
3つのリスクを防ぐ
法に適合していない建物は、大きく3つのリスクを抱えています。
①建物利用者に対するリスク
法が求める安全性を確保していない場合、利用者の健康を損なったり、災害時の避難を妨げる危険があります。利用者に対する安全の確保は、建物の所有者・運営者の責務です。
②用途変更・増改築に伴うリスク
法に適合していない建物は、確認申請が必要な用途変更や増改築を行おうとした場合にそのまま計画を進めることができません。法律上、違法な部分について法適合させることを求められるからです。
③不動産売買時のリスク
法適合していない建物の売買では、売り手は重要事項説明書で違法建築であることを伝える必要が生じ、不動産価格も低く見積もられる可能性があります。買い手は、法に適合していない建物を入手すると、使用する際に法適合化が求められます。「用途変更・増改築に伴うリスク」の場合もそうですが、労力とコストによっては事業計画に大きな影響が及びます。
以上のようなリスクを避けるためには、所有する建物や購入予定の建物について遵法性を確認しておくことが大切になります。建物の売買を計画している方はもちろん、建物の所有者で増改築や用途変更を計画している方や、コンプライアンス上、所有する建物の法適合性を確認したいと考えている方は遵法性調査の実施をご検討ください。
遵法性調査の内容
ビューローベリタスでは、年間およそ30件の遵法性調査を手掛けています。遵法性調査は、建物の資産価値を適正に評価するために行う「テクニカル・デューデリジェンス®(エンジニアリングレポート)」の調査項目の1つに含まれています。
■「テクニカル・デューデリジェンス®(エンジニアリングレポート) 」サービスの内容
サービス内容 |
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1.建物現況調査 |
2.遵法性調査 ★ |
3.修繕・更新計画 |
4.再調達価格 |
5.建物環境リスク調査(アスベスト、他) |
6.土壌汚染リスク調査 |
7.地震リスク調査(PML) |
具体的には、確認申請書類などの関連図書を精査したうえ、現査を目視調査して建物が図書と整合しているかを確認します。必要に応じて、検査済み証の有無など建物の手続きの履歴も調べます。
エンジニアリング・レポートとして依頼主にご報告し、建物が確認申請図書と整合していない部分があればその内容を指摘します。最初の契約・必要資料の入手から報告書の提出までの期間は、通常1カ月から1カ月半程度になります。
次回は、「用途変更・増改築を行う際の注意点」についてご説明します。