前回はCASBEE-ウェルネスオフィスが開発された背景についてご紹介しました。
今回は、CASBEE-ウェルネスオフィスの評価基準について解説します。
評価対象建物
CASBEE-ウェルネスオフィスは、オフィスビルを主とする建物を評価対象建物としています。
複合用途ビルの場合は、主にオフィス用途の部分を対象として、評価を行います。
評価基準
CASBEE-新築と同様に、全ての評価項目を5段階(レベル1~レベル5)で採点します。
例えば、建築基準法など、最低限の必須要件を満たしている場合はレベル1、評価時点の一般的な技術・社会水準に相当すると判断される場合はレベル3と評価できるような採点基準となっています。
評価結果表示方法
- 1) 総合評価
- 「★」表示(5段階)、点数表示(100点満点)、ランク表示(S・A・B+・B-・C)の3つで表示されます。
- 2) 性能評価
- 健康性・快適性、利便性、安全性に関する項目のみを抽出し、その抽出された平均評価点が表示されます。
- 3) 項目別評価
- 大項目区分である、基本性能(QW1:健康性・快適性、QW2:利便性、QW3:安全性)、運用管理(OM)、プログラム(PR)について、その区分別の平均レベルがレーダーチャートで表示されます。中項目の採点結果についてもバーチャートで表示されます。
採点基準
採点基準は大項目として、『基本性能』・『運用管理』・『プログラム』の3項目となっています。
大項目 | 中項目 | 評価要素 | 評価項目 |
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基本性能 | 健康性・快適性 | 空間・内装 |
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音環境 |
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光環境 |
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熱・空気環境 |
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リフレッシュ |
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運動 |
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利便性 | 移動空間・コミュニケーション |
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情報通信 |
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安全性 | 災害対応 |
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有害物質対策 |
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水質安全性 |
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セキュリティ |
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運用管理 | 維持管理計画 |
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満足度調査 |
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災害時対応 |
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プログラム | プログラム |
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(1) 基本性能
基本性能は、『健康性・快適性』・『利便性』・『安全性』の3つの中項目に分かれています。それぞれについて、評価要素・評価項目をご紹介します。
健康性・快適性
【空間・内装】・【音環境】・【光環境】・【熱・空気環境】・【リフレッシュ】・【運動】の6つの評価要素があります。
- 【空間・内装】
- 『レイアウトの柔軟性』・『知的生産性を高めるワークプレイス』・『内装計画』・『広さ』・『外観デザイン』の5項目で評価されます。
『知的生産性を高めるワークプレイス』は、オフィスを利用する組織が自らの組織の働き方を最大化する観点で計画・整備を行っているか、その努力度合いで評価されます。 - 【音環境】
- 『室内の騒音レベル』・『吸音性能』の2項目で評価されます。
『吸音性能』は、建物側でできる最大努力とオフィスを利用する組織でできる努力とで評価されます。 - 【光環境】
- 『自然光の導入』・『グレア対策』・『照度』の3項目で評価されます。
光環境の計画において、開口面積が大きくなると、暑さ(日射)やまぶしさ(グレア)制御の必要性が大きくなることから、これらの調整機能を十分に考慮した開口部計画をすることが求められます。 - 【熱・空気環境】
- 『空調方式の可変・増設性』・『室温制御』・『温度制御』・『換気制御』の4項目で評価されます。
『空調方式の可変・増設性』は、居住域の上下温度差や気流温度(残風速)を軽減するための空調方式が採用されているかを評価します。 - 【リフレッシュ】
- 『オフィスからの眺望・自然とのつながり』・『室内の植栽・自然とのつながり』・『室外の植栽・自然とのつながり』・『トイレの充足性・機能性』・『給排水設備の設置自由度』・『リフレッシュスペース』・『食事のための空間』・『分煙対応、禁煙対応』の8項目で評価されます。
『トイレの充足性・機能性』はSHASE-S206-2009にある適性器具個数をもとに評価されます。 - 【運動】
- 『運動促進・支援機能』・『階段の位置・アクセス表示』の2項目で評価されます。
『運動促進・支援機能』は、シャワー室やロッカー、駐輪場などの運動を促進・支援する装備があるかを評価のポイントとしています。
利便性
【移動空間・コミュニケーション】・【情報通信】の2つの評価要素があります。
- 【移動空間・コミュニケーション】
- 『動線における出会いの場の創出』・『EV利用の快適性』・『バリアフリー法への対応』・『打ち合わせスペース』の4項目で評価されます。
『動線における出会いの場の創出』は、日常の歩行動線の工夫などによる、顔を合わせる機会を増やすような計画の有無を評価します。占有部と共用部での取り組みの双方について評価されます。 - 【情報通信】
- 『高度情報通信インフラ』の1項目での評価となります。
『高度情報通信インフラ』は、単にコンセント容量を増やすなどの対応だけではなく、情報機器の増設やレイアウト変更に伴う情報機器の移動に対する配慮を評価します。
安全性
【災害対応】・【有害物質対策】・【水質安全性】・【セキュリティ】の4つの評価要素があります。
- 【災害対応】
- 『耐震性』、『災害時エネルギー供給』の2項目で評価されます。
『災害時エネルギー供給』は、BCP計画とは別に、災害時のエネルギー供給可能範囲について評価されます。 - 【有害物質対策】
- 有害物質対策として、化学汚染物質による空気質汚染を回避するための対策と、環境影響を及ぼす可能性のある化学汚染物質の使用削減について評価されます。
有害物質としては、ホルムアルデヒドやVOCに配慮されている材料の使用が評価のポイントとなります。 - 【水質安全性】
- 運用段階にて水質悪化に対する予防的措置について評価されます。
水質安全対策は、ステンレス管の使用や中央監視盤に故障警報が表示されるかなどが評価されます。
各階にミネラルウォーターが用意され、全員が利用できる状況にあるかという点も評価の基準となります。 - 【セキュリティ】
- 防犯対策を実施しているかが評価されます。
入退館管理システム設置の有無や、窓などにセンサー類(人感センサーなど )の設置の有無といった防犯対策の実施が評価されます。
(2) 運営管理
運営管理は、【維持管理計画】・【満足度調査】・【災害時対応】の3つの評価要素に分かれています。
- 【維持管理計画】
- 『維持管理に配慮した設計』・『維持管理用機能の確保』・『維持保全計画』・『維持管理の状況』・『中長期保全計画の有無と実効性』の5項目で評価されます。
- 【満足度調査】
- 『満足度調査の定期的実施』の1項目で評価されます。
『満足度調査の定期的実施』は、オフィス環境に関して、建物の使用者の意見を吸い上げ、次の改善に反映されているかについて評価されます。 - 【災害時対応】
- 『BCP計画の有無』・『消防訓練』・『AEDの設置』の3項目で評価されます。
『BCP計画の有無』は、オフィスを利用する組織とビル運営のBCP計画の有無、そのハードとマネジメントについて評価されます。
(3) プログラム
プログラムは、『メンタルヘルス対策・医療サービス』・『社内情報共有インフラ』・『健康推進プログラム』の評価項目で評価されます。
『健康促進プログラム』は、オフィスを利用する組織とビル運営の取り組みの双方をあわせて評価されます。
【参考文献】
- 一般社団法人 日本サステナブル建築協会(JSBC) スマートウェルネスオフィス研究委員会『CASBEE-ウェルネスオフィス暫定版 解説』