SDGsやESG投資の観点から環境不動産認証への注目が高まっています。
日本の環境不動産認証の中でも増加傾向にある「CASBEE不動産評価」について、概要とその背景を解説いたします。
CASBEE認証制度とは
「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能で評価し格付けする手法です。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価します。
CASBEEには、おもに新築や改修する建築物を対象とする「CASBEE建築評価」と、既存建築物を対象とする「CASBEE不動産評価」、オフィスビルを対象とする「CASBEE-ウェルネスオフィス評価」があります。
CASBEE不動産認証件数の広がり
下のグラフは、ビューローベリタスでCASBEE認証を実施した件数を示しています。
新築や改修案件を対象としたCASBEE建築評価は認証件数が減少傾向にあるのに対し、CASBEE不動産評価の認証件数は2016年から急激に増加しています。
この背景には2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsやESG投資・投資法人のGRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark:グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)への参画が挙げられます。
SDGs・ESG投資への寄与
SDGsへの寄与
SDGsは2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標ですが、この中の「11. 住み続けられるまちづくりを(持続可能な都市)」「12. つくる責任つかう責任(持続可能な消費と生産)」が都市開発・建築環境に関わってきます。
上記の目標達成をするために各企業が環境負荷軽減を掲げています。環境負荷軽減は目に見えづらい項目ですが、CASBEE等の環境不動産認証の取得が、目に見える社会的なアピールとして活用されています。
ESG投資
不動産は環境や社会に関する課題解決に貢献するポテンシャルが大きく、中長期的なリターンを確保できる可能性があり、重要な投資対象となっています。省エネルギー性能が高い建築物、環境負荷の少ない建築物は、光熱費削減、CO2排出量の削減につながり、中長期的に不動産価値にも反映される可能性があります。
不動産の ESG への考慮を評価するために有効なのは建築物の評価・認証制度であり、不動産を運用する企業がCASBEE認証の取得に取り組んでいるため、認証件数が増えています。
不動産投資法人のGRESB参画
昨今、不動産投資法人が積極的にGRESBに参画を始めました。GRESBは、不動産投資法人の格付けです。格付けをする評価基準は多岐にわたりますが、評価基準の中にポートフォリオの環境認証取得の有無も問われています。以前は、米国のLEEDが評価対象とされていましたが、近年、CASBEEやBELSなど、日本国内の環境認証も対象となり、認証件数の増加傾向がみられます。
CASBEE-ウェルネスオフィスの広がり
新型コロナウィルス感染拡大によりオフィスの在り方が大きく変容しているなか、建築物の健康認証がますます注目されています。経営思想も健康経営へとシフトしており、建物利用者の健康と快適性の維持・増進やオフィスで働く人々の健康と快適性に直接的に影響を及ぼす要素、知的生産性の向上に資する要因、安全・安心に関する性能が重要視されてきており、ウェルネスオフィスの需要は高まっています。
2021年4月より民間認証機関が認証できるようになり、9月末時点では45件の認証物件があります。今後も増えてくことが見込まれています。
2021年12月17日に「CASBEE-ウェルネスオフィス(WO)・CASBEE不動産のマーケット動向」のテーマでZoomオンラインセミナーを開催します。
本セミナーでは、三井住友信託銀行 伊藤雅人氏をゲストスピーカーとしてお招きし、CASBEE不動産・CASBEE-ウェルネスオフィスの市場動向などについて、マーケット側からの視点でご講演いただく予定です。
以下よりお申し込みが可能ですので、この機会にぜひご視聴ください。