WELL認証から考えるウェルネスオフィスとは?

ウェルネスとは

ウェルネスとは、よりよく生きようとする生活基盤のことをいいます。心身の健康、生活環境、社会的環境を基盤として、自分が望む生き方やライフスタイルデザインを確立させ自己実現に至ることに重きを置いています。ウェルネスは、心身ともに健康な状態であることが重要であり、その結果として生活の質を高めることに結びつく手段としての用語です。

では、なぜウェルネスという考え方が必要なのでしょうか。新型コロナウイルスの影響により、心身の健康に不安を覚える人が世界中で増加傾向にあります。生活の質や人生の質が低迷し、健康でないことに怯える生活を送った方も少なくはないと思います。。このように心身が不安定な状態ではウェルネスとはいえません。 ウェルネスという考え方の柱である心身の健康は生活の質に直結しています。心身のどちらか、または両方に不調がある場合は満足できる活動は難しくなってきます。

ではWELL認証を中心として、ウェルネスオフィスを作る際に重点的に考える内容について、具体的にみていきます。

WELL認証とは

WELL認証は「建物の環境およびエネルギー性能と利用者の健康快適性を評価する」認証システムです。WELLの目的は環境設計と運営方針を通じて「人間の健康を促進して、健康と福祉の文化を育む」ことであり、ビルの環境から従業員の健康を考えていく取り組みが行われています。

つまりWELL認証の取得や取り組みで、建物や組織が「積極的に人間の健康と福祉を向上させる環境を提供することができる」といえます。居住者の体に関わる評価項目については環境工学の観点のみならず医学の見地からも検証されており、健康志向、生産性向上、さらには離職率の低下に寄与するなど、取り組むメリットが多くあるといわれています。

また、近年は、従業員の健康やその人たちを取り巻く環境に配慮している会社(健康経営)に対して投資を行うという世界的な流れがあります。

WELL認証の10のコンセプト

WELL認証の10のコンセプト

WELL認証の10のコンセプトは、空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、こころ・意識、コミュニティで、それぞれ特定の要件が決まっています。例えば光であればオフィスの光量が一定レベルに達しているか、また明る過ぎないことも重要です。栄養であれば社員食堂で提供されている食物は健康的なバランスを保っているか、水であれば一定距離ごとにウォーターサーバーなどが設置されクリーンな水に常にアクセスできるかどうかなどです。

WELL認証の項目に取り組むことで、組織は建物のパフォーマンスを監視し、従業員のフィードバックを収集するのに役立ちます。健康と福祉の取り組みに対してデータ駆動型のアプローチができるため、組織はWELL認証の定量可能な指標を活用して、環境、社会、ガバナンス、つまりESGの報告作業を進めることができます。健康と福祉の向上を考える組織にとってよい指標になるでしょう。

WELL認証とLEED認証の比較

WELLと比較されることの多いLEEDは、建築物や都市の総合的な環境性能を評価する認証システムです。LEEDは最高クラスの環境性能を誇るビルを作るための戦略や、それをどう実現させるかというものを評価するグリーンビルディング*の認証プログラムです。コストや資源の削減を進めながら、人々の健康に良い影響を与えることに配慮し、再生可能なクリーンエネルギーを促進している建築物の認証を行っています。LEEDは環境性能の評価システムで、WELLは健康快適性に重きをおいた評価システムになります。

*グリーンビルディング:エネルギーや水、空調設備などにより環境性能の高い建物

ウェルネスオフィスとは

では健康快適性に優れたオフィスとはどのようなオフィスでしょうか。オフィスの室内環境は放射熱や、空気質、湿度、色など数多くの要素が絡み合って構築されています。「満足できる生活状態・幸福度」のことをウェルビーイングと呼びますが、オフィスにおけるウェルビーイングの向上を目的に始まったのがWELLビルディングスタンダード、すなわちWELL認証です。

ウェルネスオフィスは、人を第一に考えた環境作りをしており、すべての人に快適な環境を提供できるオフィスです。ウェルネスオフィスを構築することで集中力の向上、コミュニケーションの活性化につながります。作業効率が上がり知的生産性がさらに向上することで、作業時間が減り、健康を守ることにもつながります。

WELL認証からみるウェルネスオフィス

WELL認証の10のコンセプトから「(メンタルヘルスを含めた)こころ・意識」、「コミュニティ」の2つについて、ウェルネスオフィスの観点から見ていきます。

こころ・意識

こころ・意識のコンセプトは、生活する・はたらく・学ぶ・時間を、ウェルマインドに則り設計された建物で過ごすことで、健康と幸福を改善し、設計戦略を通じてメンタルヘルスを促進することを目的としています。

具体的な例としては、観葉植物や中庭など自然とふれあえる場所があるか、集中して作業ができるか、また仕事から離れリフレッシュできる場所があるか、仮眠や休暇など十分な休息が取れるか、といったことになります。自然との接触の増加、リフレッシュ可能なスペースの利用、効果的な休息をとることで、うつ病や不安レベルの低下、注意力の向上や仕事のストレスからのより良い回復、心理的幸福の向上など、多くの健康促進につながります。

実際に日本でもメンタルヘルスが重要視されてきていますが、働いているオフィス部分からのアプローチというのはまだ少ない段階です。WELL認証の取り組みによりここを重視することによって、従業員のこころ・意識に良い影響を与えることができるのではないでしょうか。

コミュニティ

コミュニティのコンセプトは、基本的なヘルスケアへのアクセスをサポートし、多様なニーズに対応する健康文化を構築、包括的な居住者のコミュニティを確立することを目的としています。さまざまな人々の多様なニーズを受け入れること、また利用しやすいように整備することになります。

具体的な例としては、ユニバーサルデザインや、産休・育児休暇や復職後のサポート、医療へのスムーズなアクセスや緊急時対応への事前準備などになります。予防接種、定期健康診断、有給・病気休暇などの健康増進プログラムが健康リスクを低減しながら、従業員の仕事の満足度、自尊心、全体的な健康を向上させることが非常に重要となります。

まとめ

心身の健康を意識するウェルネスによって病気や不調を未然に防げる可能性が高くなります。よりよく生きるため、または生活の質を高めるために、ウェルネスの概念を取り入れて総合的な健康を意識することは現代を生きる人々にとって有効な手段の一つとなります。同様に、従業員の健康を守るという観点から、ウェルネスオフィスの概念を取り入れてはいかがでしょうか。

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