容積率とは?前面道路との関連性や計算方法、容積率の緩和について解説

容積率は、土地の敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を示した数値です。

容積率は用途地域によって上限が定められており、ここではこれを「指定容積率」ということとします。一方で、その土地の前面道路の幅によって制限を受ける容積率もあります。ここでは「基準容積率」ということとします。建物を建てる際は、この「指定容積率」と「基準容積率」のうち、小さいほうが適用される仕組みです。

しかし、地下室や駐車場などは計算対象から除外できることもあるなど、用途や設計条件によっては容積率が緩和される制度もあります。土地の価値を最大限に引き出し、効率的な建築計画を立てるには、これらのルールを正しく理解し活用することが欠かせません。

そこでこの記事では、容積率の概要や前面道路との関連性、容積率が緩和される条件について解説します。

容積率とは

容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合を指します。わかりやすく言い換えると、「土地にどのくらいの大きさの建物を建築できるのか」を示す指標となる数値です。容積率は以下の計算式で算出できます。

容積率(%)=延べ床面積÷敷地面積×100

例えば、敷地面積が150㎡の土地に、1階70㎡、2階60㎡の家を建てる場合の延べ床面積は130㎡です。したがって、この場合の容積率は以下となります。

(70+60)÷150×100=約86.7%
建築物をセットバックした場合の建築物の高さ制限(立体図)の説明画像

なお、建築基準法第52条(容積率)では用途地域ごとの敷地に容積率の上限(指定容積率)が決められており、これを超える建築は認められません。以下、土地用途別の容積率の上限をまとめました。

用途地域 指定容積率(%)
第1種低層住居専用地域 50、60、80、100、150、200
第2種低層住居専用地域
田園住居地域
第1種中高層住居専用地域 100、150、200、300、400、500
第2種中高層住居専用地域
第1種住居専用地域
第2種住居専用地域
準住居地域
準工業地域
近隣商業地域
商業地域 200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300
工業地域 100、150、200、300、400
工業専用地域
用途地域の定めがない地域 50、80、100、200、300、400

容積率は、土地の利用形態や周辺環境に応じて建物の規模を制限する重要な指標です。したがって、遵守すべき法的な基準として、建物の設計や土地購入の際には確認が必須です。

前面道路の幅によって容積率に制限がかかることも

具体的には、建物の前面道路の幅が12m以下の場合に、「指定容積率」と「前面道路の幅員に一定の割合(0.4もしくは0.6)を乗じた容積率(基準容積率)」のいずれか小さい数値が適用されるルールとなっています。

そのため、幅の狭い道路に面している土地では、建築に際してより厳しい制限が課される可能性があるため、注意が必要です。以下、例を挙げながら解説します。

前面道路の幅が10mの場合

前面道路の幅が10mとしたときの基準容積率は、以下のとおりです。

10m×0.4×100=400%

これは、10mの道路幅に居住系の用途地域における低減係数0.4をかけ、パーセント換算した値です。

都市計画法上の指定容積率が仮に500%と設定されていた場合、上記で計算した容積率のほうが数値が小さいため、ここでは400%が採用されることになります。

したがって上記の事例の場合、建物を建てるにあたって「建物の延べ床面積を土地の面積の400%までに収める」という制限を守らなければなりません。

厳しい基準のように思えますが、このルールによって、道路幅が狭い土地に大きすぎる建物が建築されることはなく、地域の景観や快適な住環境が保たれているといえます。

前面道路の幅が2mの場合

土地の前面道路の幅が4m未満の場合、建築基準法によりセットバック(建物を建てる際に敷地を後退させること)が義務付けられています。

セットバックにより後退した分だけ敷地面積が減少するため、実際に建築に使える土地の面積も狭くなります。

ただし建築基準法上、幅4m未満の場合は道路と見なされません。そのため前面道路の幅が2mやそれ以下の場合でも、容積率の算定では道路幅を4mとして計算するのがルールです。

したがって、前面道路の幅が2mの住居系用途地域の基準容積率は、4mに低減係数0.4をかけて求めます。計算式は以下のとおりです。

4m×0.4×100=160%

仮に指定容積率が200%に設定されていた場合でも基準容積率のほうが小さいため、上記の事例では160%が土地の容積率の上限となります。

次に、セットバック後の敷地面積を求めます。セットバック後の敷地面積が135㎡になったと仮定すると、建てられる建物の延べ床面積は以下のとおりです。

135㎡×160%=216㎡

この場合、もし建築を予定している建物の延べ床面積が230㎡だった場合、計画を見直さなければなりません。このように、狭い前面道路に面した土地では、セットバックによる敷地面積の減少を考慮する必要があります。

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一定の条件を満たせば容積率が緩和される

建築基準法に基づく特例として、一定の条件を満たせば容積率の上限ルールが緩和されるものがあります。具体的には、「地下室や駐車場、共同住宅の共用廊下等、防災設備などの床面積は容積率の計算に含めない」というものです。

そのため、該当する部屋や設備がある場合は敷地面積当たりの建築可能な延べ床面積が実質的に増えることになります。

どのような場合に容積率が緩和されるのか、詳しく見ていきましょう。

地下室がある場合

建物に地下室がある場合、住宅部分の延べ床面積の1/3を上限に地下室の面積を容積率の計算から外すことができます。

例えば、地下1階、地上2階で各階100㎡の建物の場合に、地下の100㎡が容積対象外になります。

この緩和措置を使えば住宅の設計の自由度が高まり、より空間を有効利用できるでしょう。

駐車場(ビルトインガレージなど)がある場合

駐車場がある場合は、敷地内にある建築物の床面積の1/5を上限として、駐車場部分の床面積を容積率の計算から外せます。

ビルトインガレージのように建物の一部として建設される駐車場などがこれに該当します。

例えば、延べ床面積が150㎡の住宅を建てる計画の場合、その1/5となる30㎡までのビルトインガレージ部分は容積率の計算に含めずに済みます。

そのため実質的に建てられる建物の床面積が増える形となり、土地の利用効率も向上するでしょう。

マンションなどの共用部分がある場合

マンションやアパートなどの集合住宅においては、住民が共同で利用する以下の部分について容積率の緩和措置が適用されます。

  • 廊下
  • 階段
  • エレベーターホール
  • エレベーターの昇降路(シャフト)部分

この特例により、土地に対してより広い建物を建てられるようになります。

宅配ボックスがある場合

建築物に設置された宅配ボックスは、設置される階の床面積の1/100を上限として、容積率の計算から除外できます。

これにより、住宅や共同住宅、商業施設などでの宅配ボックスの設置が促進され、住民や利用者の利便性向上につながっています。

また、すでに容積率の上限に近い場合でも導入を検討しやすくなるメリットもあるでしょう。

防災に関する設備がある場合

災害への備えとして設置される特定の防災設備も、容積率の緩和対象です。具体的には備蓄倉庫や自家発電設備、蓄電池、貯水槽などが該当し、それぞれ床面積の一定割合まで延べ床面積に算入されません。

  • 備蓄倉庫:床面積の1/50
  • 自家発電設備:床面積の1/100
  • 蓄電池:床面積の1/50
  • 貯水槽:床面積の1/100

これらの緩和措置は、防災機能の強化を促進しつつ、容積率の制限内でより効果的な建築設計を可能にするためのものです。防災設備を計画的に取り入れ、建物の安全性や住環境の向上を促進する重要な役割を担っています。

前面道路と容積率に関するよくある質問

建築において容積率は重要な指標ですが、その計算や適用条件に関してわかりにくいと感じる方は多いかもしれません。ここでは、容積率オーバーの建物の法的な扱いや容積率算定時の道路幅の取り扱いなど、よくある質問とその回答をご紹介します。

容積率オーバーの建物は違法ですか?

規定の容積率を超過している建物は、基本的に違法であると見なしてよいでしょう。ただし、「違反建築物」「既存不適格建築物」のどちらに当てはまるかで、考え方は大きく異なります。

違反建築物とは、建築された当時から建築基準法などの法律に違反していた建物を指します。発覚した場合は是正命令や撤去の対象です。

一方、既存不適格建築物は、建築当時は法律に適合していたものの、のちの法改正や都市計画の変更により現在の基準に合わなくなった建物を指します。違反建築物とは異なり是正義務はありませんが、大規模の修繕・模様替えや建て替えの際には現行法に合わせる必要があります。

そのため中古住宅の購入時には、「物件が違反建築物や既存不適格建築物に該当していないか」を、不動産会社や専門家を通じて正確に確認することが必須だといえるでしょう。

2つの道路に接している場合、どちらの道路幅で計算すればいいですか?

複数の道路に接している場合、容積率の計算においては幅が「広いほう」を前面道路として扱うことができます。

例えば、幅6mの道路と幅3mの道路に接している角地であれば、幅6mの道路を前面道路として容積率を算出できます。狭い3m側の道路幅を基準にした場合よりも緩やかな制限が適用されるため、建てられる建物の面積も大きくなります。

自分の土地(購入検討中の土地)の正確な容積率や道路の幅を知るには、どうすればいいですか?

土地の正確な容積率や前面道路の幅を確認したい場合は、その土地がある自治体の窓口に直接問い合わせることが最も確実な方法です。おもに「都市計画課」や「建築指導課」といった部署が窓口となっており、担当者に土地の住所を伝えれば用途地域や指定容積率、前面道路の幅について正確な情報を得られるでしょう。

自治体には道路台帳や都市計画図などの公式資料が備えられており、インターネットや不動産会社からの情報よりも信頼性が高い点が特徴です。不動産会社から容積率や道路幅に関する資料をもらっている場合でも、最終的にはご自身で自治体に確認されることをおすすめします。

まとめ

容積率は、土地の面積に対する建物の延べ床面積の割合を示す重要な指標です。用途地域ごとに上限が定められており、その基準を超える建築はできません。

また、前面道路の幅に応じて容積率が制限されるケースも存在します。前面道路が12m以下の場合は別途計算が必要なため、注意しましょう。

一方、地下室は住宅部分の延べ床面積の1/3まで容積率に算入されないなど、特定の条件下で容積率が緩和されるケースもあります。土地の正確な容積率や道路幅は自治体の都市計画課などで事前に確認しておきましょう。

容積率について不安や疑問がある場合は、専門の遵法性調査サービスを利用するのもおすすめです。第三者の専門機関が建築基準法や関連法令に照らし合わせて既存建築物の適法性を客観的に調査し、信頼性を確保します。

安心して土地活用や建築計画を進めるために、専門調査の活用をご検討ください。

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