WELL認証のメリットとは

SDGs(持続可能な開発目標)の観点から、建物の環境・エネルギー性能、利用者の健康・快適性を追求するトレンドが広まっています。これに伴い、米国のWELL認証が注目されつつあります。
企業が社会的責任を果たすのは当然として、イメージの向上を図りたい、労働生産性を上げたい、保有不動産に付加価値を付けたいなどさまざまなニーズがあります。
WELL認証を取得することは、施設けではなく、そこで働く人にもメリットがあります。施設の環境性能を評価するLEED認証とは違い、WELL認証は環境性能に加え建物利用者の健康快適性を評価するシステムです。

→ WELL認証適合性検証

WELL認証とは

WELL認証とは、ビルやオフィス空間で過ごす人の「健康とウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好であること)」に注目し、建物空間の機能をパフォーマンスベースで測定・評価・認証する評価システムです。
健康経営や働き改革を目指す企業にとって、クローバルな指標で方向性や達成度が評価される認証として注目されています。
WELLv1 およびWELL v2パイロット版の新規プロジェクト登録は2020年12月31日に終了しています。すでに登録されているプロジェクトは、デジタルスタンダード、プロジェクトロビー、キーリソースなどの認証リソースに引き続きアクセス可能です。2021年からは正式版v2の登録になります。
WELL認証には「WELL Building Standard™」と「WELL Health-Safety Rating」がありますが、この記事では「WELL Building Standard™」について解説いたします。

■オフィスでどれくらい快適に働けるかの指標

平均すると、人は一日のうち90%、約21時間を屋内で過ごしています。したがって、建物が健康に良い環境かどうかは利用する人にとってきわめて重要です。WELLは建物の環境・エネルギー性能と利用者の健康・快適性を評価する世界初のシステムです。
特に居住者の身体にかかわる評価ポイントについては、環境工学の観点のみならず、医学の見地からも検証が加えられており、健康志向、生産性向上、さらには離職率の低下に寄与するなどの取得メリットがあるといわれています。

■10のコンセプトをもとに評価される

2013年、Delos®によって公益法人IWBI(International WELL Building Institute™)が設立されました。7年間の研究開発を経て、2014年10月に評価システム“WELL Building Standard™”(略称“WELL”)のv1 が正式に公開されました。2018年5月31日には試験的なWELL v2 pilotが公開され、2022年9月15日にWELL v2が発表されました。
空気・水・栄養・光・フィットネス・快適性・こころを介して人間の健康と幸福に影響を与える要因を測定し、またパフォーマンス向上の取り組みを評価するのがWELLの基本コンセプトです。 設計図面での評価に加え、検査員が現場に赴いて検証し、コンセプトに沿ったサンプリングをして評価する取り組みを行います。
WELL認証を受けるには、全ての必須項目(Precondition)の条件を満たしたうえで、加点項目(Optimization)から必要な加点を取得することが必要です。点数が多いと認証レベルが高くなります。必須項目を満たし、加えて加点項目が60点以上で「ゴールド」、80点以上で「プラチナ」の認証になります。
審査は必須・加点項目を満たしていることを示す書類審査の他、現地にて空気質・水質・光・音・温熱感指標などの環境測定と各種チェックにおいて要件を満たす必要があります。

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認証レベル

WELL v2 評価項目

Concepts分野 Feature 評価項目 Partsパート Pointsポイント
必須項目数
Precondition
加点項目数
Optimization
必須パート数 加点パート数 加点パート
総配点数
Feature CAPなし
最終取得
最大得点
A:空気 4 10 9 16 18点 100点
W:水 3 6 5 12 14点
N:食物 2 12 5 14 16点
L:光 2 7 2 10 18点
V:運動 2 9 6 16 21点
T:温熱快適性 1 8 2 13 16点
S:音 1 8 2 12 18点
X:材料 3 9 8 16 18点
M:こころ 2 9 3 17 19点
C:コミュニティ 4 14 6 30 39点
I:イノベーション - (6) - (9) (10点) 10点
合計1 24 98 48 165 207点 110点
合計2 122 213

WELL認証取得のメリット

WELL認証を取得している建物では以下のメリットが期待されています。

  • 生産性の向上
    WELL認証を取得している施設では働く従業員の健康促進と疾病リスクの減少により、業務パフォーマンスの向上が見込める。
  • ランニングコストの削減
    エネルギー消費量が少ないため、ランニングコストが抑えられる。
  • 企業のブランディング
    SDGs、ESG投資に積極的に取り組んでいる姿勢を対外的にアピールすることで企業のブランディングに繋がる。
  • 離職率の低下と採用の強化
    企業が働き方改革・健康経営を組織内に示すことにより、優秀な人材の獲得、離職率の低下が期待できる。
  • テナントシーリングの強化
    上記の理由から認証を取得していない建物と差別化が図れ、テナントリーシング時においても優位性が得られる。特に外資系企業に対しては、グローバルで認知度の高いWELL認証を取得していることで誘致しやすくなる。

WELL認証の取得方法

WELL認証の取得までの流れは以下のとおりです。

1)プロジェクトの登録申請を行う

WELL認証の取得を目指すことが決定したら、まずはプロジェクトの登録申請が必要です。登録申請は、国際WELLビルディング協会(IWBI:International WELL Building Institute™)のウェブサイトから行うことができます。

2)書類審査

設計図書(意匠図・電気設備図・機械設備図 等)、プロジェクトのスケジュール、WELL評価項目が満たされていることを示す根拠資料や保証状などを揃える必要があります。書類はすべて英語で作成する必要があり、書類審査は質疑回答を含め約10週間程度です(物件により異なります)。

3)認証審査員による現地審査

現地審査は、認証審査員が建物を訪れて実施します。審査は2~4日かけて調査されます。認証審査の結果、WELL認証の基準を満たしている場合は、WELL認証を取得することができます。

4)WELL認証を取得

WELL認証は、前述のとおり点数により「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」の4つのレベルで取得することができます。WELL認証の有効期限は3年に設定されているため、再認証を行う必要があります。また取得後は1年に1回、運用状況記録と施設利用者のアンケートをまとめた結果報告が必要な項目もあります。

日本におけるWELL認証を取得している物件(一部)

以下は日本でWELL認証を取得した物件の一例です。※WELL Health-Safetyを除く

No. 物件名 所在地 プロジェクト
タイプ
ランク 認証日
1 ISUZU MOTORS HQ PROJECT 神奈川県 WELL v2 Pilot プラチナ 2023-01-31
2 Maeda Corporation Tokyo Building Works Branch Office Renovation 東京都 WELL v2 Pilot ゴールド 2022-12-14
3 BIZrium NAGOYA 愛知県 WELL v2 Pilot ゴールド 2022-12-06
4 WELLNET CORPORATION 北海道 WELL v2 Pilot プラチナ 2022-09-09
5 SHIMIZU CORPORATION TOHOKU BRANCH 宮城県 WELL v2 Pilot プラチナ 2022-08-24
6 YOKOHAMA GRANGATE 神奈川県 WELL v1 ゴールド 2022-08-18
7 Nikken Sekkei Tokyo Building, 7th floor 東京都 WELL v2 Pilot プラチナ 2022-08-11
8 Protea Japan Office 東京都 WELL v2 Pilot ゴールド 2022-08-09
9 Asanuma Corporation Nagoya Branch Office Renovation 愛知県 WELL v2 Pilot ゴールド 2022-07-28
10 SHIMIZU CORPORATION HOKURIKU BRANCH 石川県 WELL v2 Pilot プラチナ 2022-07-14
11 Mitsubishi Electric SUSTIE 神奈川県 WELL v1 プラチナ 2022-07-07
12 Obayashi Corporation’s Technical Research Institute(TRI)-RECERTIFICATION 東京都 WELL v1 ゴールド 2022-05-05
13 Nishimatsu Construction Headquarters 東京都 WELL v2 Pilot プラチナ 2021-12-09
14 DaiwaHouseGroup MIRAI KACHI KYOSO Center 奈良県 WELL v2 Pilot プラチナ 2021-12-02
15 Kajima Technical Research Institute Main Complex-Research Building 東京都 WELL v2 Pilot プラチナ 2021-03-23
16 Takenaka Corporation Fukae Chikuyu Ryo Dormitory 兵庫県 WELL v1 シルバー 2021-02-10
17 Panasonic Life Solutions Company System Solutions Development Center 大阪府 WELL v2 Pilot ゴールド 2021-01-19
18 point 0 marunouchi 東京都 WELL v2 Pilot ゴールド 2020-12-22
19 Tokyu Fudosan Holdings HQ Office - SHIBUYA SOLASTA 東京都 WELL v1 シルバー 2020-12-10
20 GOOD NATURE HOTEL KYOTO 京都府 WELL v1 ゴールド 2020-08-06
21 AZUSA SEKKEI HQ Office 東京都 WELL v2 Pilot プラチナ 2020-05-28
22 SEIWA BUSINESS Head Office 東京都 WELL v1 ゴールド 2020-02-03
23 Takenaka Corporation Tokyo Main Office Renovation Project 東京都 WELL v2 Pilot ゴールド 2020-01-29
24 ITOKI HQ Office 東京都 WELL v1 ゴールド 2019-10-08
25 Taisei ZEB Demonstration Building 神奈川県 WELL v1 プラチナ 2019-05-23

International WELL Building Instituteよりビューローベリタスにて作成

WELL認証の取得をするならビューローベリタスへ

WELL認証取得を目指す場合、項目ごとの評価内容を把握し、どのような背景で要求事項として設定されているかを理解したうえで、仕様設計に反映させることが求められます。
ビューローベリタスは、事例に裏打ちされた経験に基づいて下記のWELL認証適合性検証業務を実施しています。

  • フィージビリティスタディ(目標レベルの決定)
  • 設計・施工サポート、要求事項の整理
  • 提出資料の作成支援、取りまとめと検証
  • 現地審査サポート

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WELL認証の事例から取得目的を紹介

まとめ

SDGsの達成に向け、ESG投資に注力をする企業が増えています。環境負荷を減らす取り組みはもちろんのこと、最近では環境重視のみならず、働く人の快適性を追求した健康経営が注目を集めています。オフィス空間など複数人が利用する空間に求められる健康安全性は、今後より高まることが予想されます。
WELL認証を取得することは環境面だけではなく、そこで働く人の健康面にもメリットがあります。また、コスト面や企業ブランディングでもメリットが得られることが期待できます。

→ WELL認証適合性検証

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