SDGsやESG投資の観点から環境不動産認証への注目が高まっています。
下記は主な環境不動産認証の認証件数です。2015年から全体的に増加傾向ではありますが、CASBEE認証の件数が非常に多く増えており、2017年と比べると2022年には3.5倍以上となっています。増加傾向にあるCASBEE不動産の概要や背景について解説いたします。
CASBEE認証制度とは
「CASBEE」(建築環境総合性能評価システム)は、建築物の環境性能で評価し格付けする手法です。省エネルギーや環境負荷の少ない資機材の使用といった環境配慮はもとより、室内の快適性や景観への配慮なども含めた建物の品質を総合的に評価するシステムです。
→ CASBEEの概要について詳しくはこちら(一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター ウェブサイト)
CASBEEには、主に新築や改修する建築物を対象とする「CASBEE建築評価」と、既存建築物を対象とする「CASBEE不動産評価」、オフィスビルを対象とする「CASBEEウェルネスオフィス評価」があります。
CASBEE不動産認証の概要
CASBEE不動産は、不動産投資家や不動産オーナー、アセットマネジャー/プロパティマネジャー、テナントなどさまざまな不動産マーケットのプレーヤー向けに活用されるよう作られた、超簡易型の建物環境格付システムです。格付け方法については従来のCASBEEと同様、「S」「A」「B+」「B-」「C」の5段階格付ですが、評価項目が従来のCASBEE建築の半分以下に絞り込まれながらも、CASBEE標準版の評価結果との整合性や国際共通項目を考慮することで、国内外の不動産マーケットプレーヤーに対し環境性能評価を分かりやすく示しています。
評価の対象となる物件は、
- 竣工後1年以上経過した既存建築物
- 建物用途:オフィス・店舗・物流施設・共同住宅(それらの複合用途を含む)
です。
CASBEE不動産認証件数増加の背景
下記のグラフは、CASBEE認証の認証件数を示しています。
CASBEE不動産は2021年から急激に増加しています。また、CASBEEウェルネスオフィスは2019年6月に開始されてまだ5年ですが、着実に認証件数が増えています。
この背景には2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsの影響が考えられます。SDGsは2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標ですが、この中の「11. 住み続けられるまちづくりを(持続可能な都市)」「12. つくる責任つかう責任(持続可能な消費と生産)」「13.気候変動に具体的な対策を」が都市開発・建築環境に関わってきます。SDGsが採択されてから8年が経過し、社会へ広く浸透したことは増加要因の一つでしょう。また、2015年に合意されたパリ協定の締結を受けて日本で設定された「2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で26%削減する」といった中期目標や、2050年のカーボンニュートラル実現を見据えた経済産業省による「GXリーグ」の設立など、二酸化炭素排出量の削減意識が国内で広く高まっていることも挙げられます。
CASBEE建築に比べCASBEE不動産の方が急激に増加しているのには、CASBEE不動産の認証取得がGRESBの加点項目となることも要因として考えられます。GRESB(Global Real Estate Sustainability Benchmark:グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)は、欧州の年金基金グループが創設した不動産会社・運用機関のサステナビリティ配慮を測るベンチマークです。不動産の既存投資物件や新規開発・大規模改修プロジェクトでの取り組みやインフラファンドやアセットにおける取り組みなど、実物資産を対象に評価しており、主に欧米の主要機関投資家が投資先を選定する際に活用しています。
また、CASBEE建築に比べてCASBEE不動産は審査項目が半分以下であり、認証取得に必要な専門知識の幅もやや少なく、作業量が少ないことも認証件数の増加を後押ししています。
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