ピロティのある建築物は、地面と接している部分が柱の周囲に限られます。通常の考え方に従って柱の周囲の地面を高さの基準とすると、建築物の実態を適切に反映できない場合があります。そのため、ピロティを有する建築物の地盤面を算定する際には、特有の考え方が適用される点に注意が必要です。
本記事では、ピロティや屋外階段、バルコニーのある建築物における地盤面算定の考え方を解説します。また、容積率制限の基準となる地盤面についても説明しますので、該当する建築物の所有する方や新築を計画されている方は、参考にしてください。
地盤面の算定の基本
地盤面とは「建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面」を指します。建築基準法施行令第2条第2項に定められており、建築物の高さや軒の高さ、建築面積などを算定する際の基準となります。地面と接する位置の高低差が3mを超える場合は、高低差が3m以内となるように領域を区分し、それぞれの地盤面を算定します。
地盤面の高さは「基準となる高さからの見付面積÷建築物の周囲の長さの合計」の計算で求めます。計算方法自体は比較的単純ですが、どこを地面と接する位置とみなすか、またどのように領域を区分するかによって解釈が分かれる場合があります。
地盤面の定義や算定基準、からぼり(ドライエリア)の取り扱いについては「地盤面の算定とは~基本的な算定方法やからぼりの取り扱いを解説~」をご参照ください。
本記事では、ピロティのある建築物や特殊な形状の建築物における地盤面の考え方に加え、容積率制限における地盤面の取り扱いについて取り上げます。
高低差の大きい敷地における地盤面の考え方
高低差が3mを超える敷地で地盤面を算定する場合、単純に3mごとに領域を区分すればよいとは限りません。ここでは、高低差の大きい敷地における地盤面算定の基本的な考え方と、地面が段差状になっている場合の取り扱いについて解説します。
高低差3m超の敷地における基本的な考え方
高低差が3m超の敷地では、原則として建築物が地面と接する位置の最高点または最低点を起算点とし、高低差が3m以内となるように領域を区分します。そして、それぞれの領域ごとに地盤面を設定することが基本です。このとき、領域の境界線は直線で設定します。
高さの起算点は、最高点と最低点のいずれを採用しても差し支えありません。ただし、地盤面が現況より著しく高くなる場合などには、起算点の取り方を指定している特定行政庁もあります。
一方、敷地や建築物の形状が特殊で、3mごとの区分では実態を適切に反映できない場合には、例外的に敷地や建築物の形状に即して領域を決定します。例えば、計画的にひな壇状に造成された土地に住宅を建築する場合には、ひな壇ごとに領域を設定します。また、空中歩廊を有する建築物を斜面地に建築する場合には、建築物のまとまりごとに領域を設定し、それぞれについて地盤面を算定します。
なお、地盤面は用途によって取り扱いが異なります。高低差3mごとに領域を区分する施行令第2条第2項の規定は、建築面積・建築物の高さおよび軒の高さを算定する場合に適用されるためです。一例として、「地階」を判定に用いる地盤面は、高低差が3mを超える場合であっても領域を区分せず、建築物全体について一つの地盤面を設定する取り扱いとされています。
垂直な面に建築物が接する場合
擁壁や切土により、地面がほぼ垂直の段差となっている敷地もあります。このような敷地で建築物が垂直面に接している場合、その垂直面の高さが3mを超えると、該当垂直面が領域の境界線となります。境界線部分の地面と接する位置の高さは「下段+3m」として地盤面の算定に組み込まれるため、上段の地盤面は実際の地盤面より低く、下段の地盤面は実際の地盤面より高く算定されます。
領域の区分方法によって、建築物の高さの基準も異なります。絶対高さ制限や斜線制限の適用結果にも影響するため、計画可能な建築物の規模が変わる場合があります。このような取り扱いは判断が分かれやすいため、確認申請に先立ち、特定行政庁へ相談しておくことが望ましいでしょう。
ピロティがある場合の地盤面
ピロティがある建築物は、柱の周囲のみが地面に接するため、どこを地面と接する位置として取り扱うかが問題となります。屋外階段やバルコニーがある場合も同様です。ここでは、ピロティ、屋外階段およびバルコニーのある建築物における地盤面算定の考え方について解説します。
ピロティ部分の地盤面を算定する考え方
ピロティにおいて実際に地面と接しているのは柱の周囲のみであり、張り出した床部分は地面とは接していません。柱が地面と接する位置のみを基準として地盤面を算定すると、柱の配置によって地盤面の高さが左右されます。例えば、柱が敷地の低い位置にあれば地盤面は低くなり、高い位置にあれば地盤面は高くなります。同じ建築物であっても、柱の配置によって高さの基準が変わることになります。
そのため、ピロティのある建築物の地盤面算定では、上階部分を水平投影する取り扱いが定められています。ピロティが設けられ、上階が下階より張り出している場合は、上階を地表面に水平投影し、投影された外壁やこれに代わる柱の中心線を結んだ位置を「地面と接する位置」とみなします。ただし、張り出している部分が屋根やひさしの場合は対象となりません。
このように設定した位置を基準として地面の高さを求め、見付面積および周長を用いて地盤面を算定します。
屋外階段やバルコニーがある場合の考え方
屋外階段や吹きさらしの廊下、バルコニーがある建築物についても、基本的にはピロティと同様の考え方により地盤面を算定します。屋外階段や吹きさらしの廊下、バルコニーを地表面に水平投影し、投影された手すり壁などの中心線を結んだ位置を地面と接する位置として取り扱います。
ただし、この取り扱いが一律に適用されるわけではありません。一戸建て住宅などの小規模な建築物では適用しない扱いとされる場合があり、特定行政庁によって運用が異なります。
また、ひさしやポーチのように規模が小さく、屋内的な用途をもたない部分については、地盤面算定の対象に含めるかどうかの判断が分かれることがあります。該当する箇所がある場合は、設計段階で特定行政庁へ事前に確認しておくことが望ましいでしょう。
容積率制限に関係する地盤面の算定
住宅などの地階に認められている容積率の不算入措置においても、地盤面の位置が判断基準となります。容積率制限と地盤面の関係性について確認しておきましょう。
地下室の容積率不算入と地盤面の関係
住宅や老人ホームなどの地階で、天井が地盤面から高さ1m以下にある場合は、当該建築物の住宅や老人ホームなどの用途に供する部分の床面積合計について、その3分の1を上限として、容積率算定の基礎となる延べ面積から除外されます(建築基準法第52条第3項)。
ここでいう地盤面は同条第4項で定義されており、高低差が3mを超える場合の領域の区分方法を含め、建築基準法施行令第2条第2項と同様の考え方によります。
この規定の影響を受けやすいのが斜面地です。地盤面が高いほど容積率不算入の対象となる部分が増え、結果としてより大きな床面積を確保できる場合があります。一方、地盤面が低い場合は、容積率算定上の床面積に算入しなければならない範囲が広くなります。地盤面の設定によって計画可能な床面積や住戸数が変わる可能性があるため、計画段階で特定行政庁へ確認しておくことが重要です。
容積率の計算や緩和については、「容積率とは~前面道路との関連性や計算方法、容積率の緩和について解説~」で詳しく解説しています。
条例で容積率制限の地盤面を別に定める仕組み
地階の容積率不算入制度を活用した、いわゆる「地下室マンション」が社会的な課題となったことを受け、2005年に建築基準法が施行されました。これにより、地方自治体は条例によって、容積率算定に用いる地盤面を別に定めることが可能となりました。
| 建築基準法第52条第5項 |
|---|
| 地方公共団体は、土地の状況等により必要と認める場合においては、前項の規定にかかわらず、政令で定める基準に従い、条例で、区域を限り、第三項の地盤面を別に定めることができる。 引用:e-Gov法令検索「建築基準法」 |
ただし、地方自治体が地盤面を任意に定められるわけではありません。対象区域を限定したうえで、建築基準法施行令第135条の15に定める基準に従う必要があります。
| 建築基準法施行令第135条の15(条例で地盤面を別に定める場合の基準) |
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| 法第五十二条第五項の政令で定める基準は、次のとおりとする。 一 建築物が周囲の地面と接する位置のうち最も低い位置の高さ以上の高さに定めること。 二 周囲の地面と接する位置の高低差が三メートルを超える建築物については、その接する位置のうち最も低い位置からの高さが三メートルを超えない範囲内で定めること。 三 周囲の地面と接する位置の高低差が三メートル以下の建築物については、その接する位置の平均の高さを超えない範囲内で定めること。 引用:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」 |
条例により建築基準法上の地盤面より低い位置に地盤面が定められた場合、容積率不算入の対象となる地階部分は減少します。その結果、容積率の算定対象となる床面積が増えるため、同一敷地内で計画できる建築物の規模が制限される可能性があります。
条例の有無を確認する方法
容積率制限に用いる地盤面を条例で別に定める制度は、斜面地でのマンション開発が多い東京都や神奈川県、兵庫県などで導入されています。
例えば、大田区や芦屋市では、斜面地の建築物の階数を制限するとともに、容積率算定に用いる地盤面を定める条例を制定しています。また、横浜市のように、階数制限と地盤面の指定を別の条例で定めている自治体もあります。
ただし、対象となる区域や用途、地盤面の設定方法は自治体によって異なります。同様の制度であっても運用内容には違いがあるため、他の自治体の取り扱いをそのまま適用することはできません。
条例の有無や内容を確認する際は、建築物の所在地を管轄する特定行政庁の例規集で「斜面地」「地下室」「地盤面」などのキーワードを用いて検索するとよいでしょう。また、例規集の記載内容のみで判断するのではなく、事前相談を通じて運用上の取り扱いを確認することが重要です。
地盤面の算定に不安がある場合は遵法性調査を検討
ここまで説明してきたとおり、ピロティのある建築物や斜面地に建つ建築物は、地盤面の設定によって建築物の高さや容積率の判定が変わります。新築時には適法であった場合でも、その後の条例の制定や改正により、現行法令に適合しない既存不適格建築物となっていることがあります。既存不適格建築物は直ちに違法となるわけではありませんが、一定規模以上の増改築や同規模での建て替えに制約を受ける可能性があり、将来的な利活用や不動産取引に影響を及ぼすことがあります。
遵法性調査では、図面と現況を照合し、建築物の法令適合状況を確認できます。ビューローベリタスの遵法性調査では、図面のみを用いた図上調査にも対応しています。建築物の適法性や既存不適格の状況について不安な点がある場合は、専門家への相談を検討するとよいでしょう。
まとめ
ピロティや屋外階段のある建築物では、上階部分を地表面に水平投影し、その外壁や手すり壁の中心線を結んだ位置を基準として、地盤面を算定します。また、高低差が3mを超える敷地では、高低差が3m以内となるよう領域を区分し、それぞれについて地盤面を算定することが原則です。ただし、擁壁による段差やひな壇状の造成地などでは、敷地や建築物の形状に応じた取り扱いが求められる場合があります。
地盤面の算定は、建築物の高さ制限や容積率制限に関わる重要な要素です。一方で、具体的な取り扱いは特定行政庁によって異なる場合があるため、計画段階で確認しておくことが重要です。
また、容積率制限に用いる地盤面を別に定める条例は、2004年の法改正以降、各自治体で整備が進められています。所有する建築物について適法性や既存不適格の有無に不安がある場合は、ビューローベリタスの遵法性調査サービスをご活用ください。

