はじめに
既に幾度か当コラムで紹介しているアメリカの建築物環境認証LEEDは、2~3年前は国内上場ゼネコンでも知られていない存在でした。それから現在までに、多くのゼネコンがLEEDについて名前だけではなく取り組み内容を知るまでの浸透ぶりとなりました。その動向の一つの理由として、新規プロジェクトの入札要件にLEED取得が盛り込まれたことが大きいと考えます。直近では物流プロジェクトの動きが活発であることから、今回は物流倉庫の国内外の登録認証状況についてご紹介します。
【これまでのLEEDに関するコラム記事】
- LEED v4.1 Beta版の最新動向
- LEED v4.1 「既存建物の運用・保守」O+M Beta版の運用実績データについて(Business Vision 10 December 2018)
- LEED v4.1 O+M Beta版は起爆剤になるか
- LEED認証 評価項目「水の効率利用(Water Efficiency)」について
- LEED ND(Neighborhood Development、街区)の評価について
- LEED認証の取得件数が急増する理由と取得のメリット
- グリーンビルディングとは? 取り組みを評価するLEED認証
国内の物流倉庫プロジェクト取得状況
まず、国内におけるLEEDのプロジェクト登録と認証数の合計は302件(2020年10月19日調べ)あり、そのうち物流と倉庫関連プロジェクトは27件(図1)で、オフィス、店舗に続き3番目に多い用途となっています。
現行のv4およびv4.1での認証を受けたプロジェクトはないものの、前のv2009では、多くのプロジェクトがGold(60~79点)(*)を取得しています(図2)。
(*)ランクは、Platinum(80~)、Gold(60~79点)、Silver(50~59点)、Certified(40~49点)。40点未満は認証を受けることができない。
図1
図2
BD+C :新築一棟評価、ID+C:部分評価、O+M:運用中既存建物、CS:テナントスペース含むプロジェクト、WDC:物流倉庫、NC:テナントなし新築プロジェクト
世界の物流倉庫プロジェクト取得状況
世界では、現行のv4およびv4.1で登録されたプロジェクトの多くは「プロジェクト進行中(認証前)」となっていますが、既に認証を受けているプロジェクトもあります。v2009を含め、Silver(50~59点)が最も多く、国内で多く見られたGoldは3番目となっています。
図3
物流倉庫プロジェクトの認証取得戦略
当然のことながら、目標をどこのランクにするかでかかるコストは変わってきます。
特に目標をGoldとするプロジェクトの場合、再生可能エネルギー設備(太陽光発電等)や雨水利用システム、タスクアンビエント照明といった省エネルギーに貢献する設備を検討する必要が出てきます。
まとめ
今回、物流倉庫のLEEDについて、国内外の認証状況、認証取得戦略について取り上げました。オンラインショッピング需要が新型コロナウイルス感染拡大により加速し、それに応じて物流倉庫も増えていくと予想されます。海外デベロッパーによる国内物流倉庫への投資も増えてきているなかで、LEED取得の動きはより活発になっていくと考えられます。引き続き国内のLEEDへの参加動向に注視し、その状況をアップデートしてまいります。